ケアマネは利用者の預金を引き出せる?できない理由と代替方法5つ

「通帳とカードを預かって、お金をおろしてきてほしい」——独居や認知症の利用者を担当していると、こうお願いされる場面は珍しくありません。けれど結論から言うと、ケアマネが利用者の預金を引き出すことはできません。本記事では、なぜ引き出せないのか、その法的根拠と現場で起こりやすいトラブルを整理したうえで、利用者のお金を安全に管理するための具体的な代替方法と、ケアマネが踏むべき手順までわかりやすく解説します。
- ケアマネが利用者の預金を引き出せない3つの理由(法律・リスク・制度)
- 善意の代行で起きた実際のトラブル事例
- 成年後見制度・日常生活自立支援事業など5つの代替方法と選び方
- 「お金は扱わない」を守りつつケアマネができる支援の手順
ケアマネは利用者の預金を引き出せる?結論はできない
まず大前提を押さえましょう。ケアマネジャー(介護支援専門員)は、利用者の生活全般を調整する立場ですが、財産を管理する権限は一切与えられていません。通帳やキャッシュカードを預かって銀行で出金する行為は、業務範囲を超えており、不正行為とみなされるおそれがあります。
銀行の窓口やATMで預金を引き出せるのは、原則として本人か、法的に権限を与えられた代理人(成年後見人など)だけです。「家族に頼まれたから」「利用者本人がお願いしてきたから」という理由があっても、ケアマネ個人が代行してよいことにはなりません。
新人でも、独居で身寄りのない利用者さんだと、私が代わりにおろすしかない状況になりませんか?
先輩気持ちはわかるけど、そこで自分が引き受けるのが一番危ないのよ。「お金を扱う人」を別に用意するのが、私たちの本当の仕事なの。後半で紹介する仕組みにつなげれば大丈夫よ。
ケアマネの業務範囲と金銭管理の違い
ケアマネの業務は介護保険法に基づき、居宅サービス計画(ケアプラン)の作成、サービス提供事業者との連絡調整、モニタリング、給付管理などが中心です。あくまで介護サービスの利用を支援する立場であり、お金そのものを直接管理したり代行したりする業務は含まれていません。
一方、預金の引き出しや家計のやりくりは、法律上は「財産管理」にあたります。これを行えるのは、本人・成年後見人・法的に委任を受けた人に限られます。ケアマネが通帳やカードを預かって銀行から出金すれば、それは業務の範囲を逸脱した行為です。
| 区分 | ケアマネの業務(できる) | 財産管理(できない) |
|---|---|---|
| 内容 | ケアプラン作成・連絡調整・モニタリング・給付管理 | 預金の引き出し・支払い代行・通帳/印鑑の保管 |
| 根拠 | 介護保険法 | 民法(後見・委任など) |
| 担い手 | 介護支援専門員 | 本人・成年後見人・委任を受けた家族など |
| 報酬 | 居宅介護支援費として算定 | 算定対象外(業務外) |
ケアマネが利用者の預金を引き出せない3つの理由
① 法律上の権限がないから
ケアマネは介護保険制度に基づく支援を行う専門職であり、財産管理の権限は付与されていません。銀行での出金は「本人または法的代理人」でなければ行えないため、ケアマネが代理ですることはそもそも制度上できないのです。
② トラブル・横領を疑われるリスクが極めて高いから
もしケアマネが利用者の預金を扱えば、お金が紛失したり使い道に疑問が出たりした際に、「横領」「不正使用」と疑われるリスクが一気に高まります。利用者・家族との信頼関係を守るためにも、金銭に直接触れないことが大原則です。
③ 介護保険サービスの範囲外で報酬も算定できないから
預金の引き出しやお金の管理は介護保険サービスではなく、報酬の算定もできません。事業所として業務外のことを行えば、運営指導や行政処分の対象となる可能性もあります。
新人「今回だけ」「少額だから」なら大丈夫でしょうか?
先輩金額の大小は関係ないの。一度引き受けると「次もお願い」が続いて、断れなくなる。最初からやらない、が自分を守る一番の方法よ。
善意の代行で起きた実際のトラブル事例
現場では「お金をおろしてきてほしい」と頼まれ、善意で対応したケアマネが、後にトラブルへ巻き込まれるケースが報告されています。
- 預かった現金が紛失し、横領を疑われてしまった
- 利用者の死亡後、相続人から「使途を説明してほしい」と責任を問われた
- 銀行で代理出金をしようとして、金融機関から不正取引として扱われた
- 家族間で「お金の管理を任せた・任せていない」の争いに巻き込まれた
いずれも、本人や家族からの「お願い」がきっかけです。頼まれごとであっても、ケアマネが金銭を扱うことは大きなリスクになることがわかります。
預金管理が必要なときの5つの代替方法
「ケアマネはできない」で終わってしまっては、利用者の生活は守れません。お金の管理が必要な場面では、次の選択肢を本人の状態に合わせて検討します。
① 成年後見制度を活用する
判断能力が低下している場合は、家庭裁判所に申し立てて成年後見人を選任してもらう方法があります。後見人には財産管理の権限があり、預金の引き出しや生活費の支払い、契約手続きまで行えます。判断能力の程度に応じて「後見・保佐・補助」の3類型があります。
② 日常生活自立支援事業を利用する
社会福祉協議会が実施する日常生活自立支援事業では、福祉サービス利用援助の一環として、通帳や印鑑を預かり、公共料金の支払いや日常的な出金を支援してくれます。認知症や軽度の判断力低下がある人に有効で、後見制度より手軽に始めやすいのが特長です。
③ 銀行の代理人カード・代理人サービスを利用する
多くの金融機関には「代理人カード」の仕組みがあり、家族など信頼できる人が代理で出金できます。近年は判断能力が低下した本人に代わって家族が手続きできる「代理人取引」の制度を整える銀行も増えています。ケアマネ自身ではなく、家族や後見人に依頼してもらうのが安全です。
④ 家族の協力を得る
遠方の家族でも、定期的な来訪やインターネットバンキングの活用で対応できる場合があります。ケアマネは家族との連絡調整を担い、実際の金銭管理は家族に委ねるのが適切です。
⑤ 金銭管理サービス・専門職への相談につなぐ
地域包括支援センターや社会福祉協議会、弁護士・司法書士などの専門職に相談する道もあります。状況が複雑なときほど、早めに専門職へつなぐことが利用者の利益につながります。
| 方法 | 向いている人 | 主な担い手 |
|---|---|---|
| 成年後見制度 | 判断能力が大きく低下している | 成年後見人(家庭裁判所が選任) |
| 日常生活自立支援事業 | 軽度の判断力低下・認知症初期 | 社会福祉協議会 |
| 代理人カード等 | 家族など信頼できる人がいる | 家族・金融機関 |
| 家族の協力 | 協力可能な家族がいる | 家族 |
| 専門職への相談 | 状況が複雑・身寄りがない | 地域包括・社協・専門職 |
新人どれを選べばいいか、利用者さんに合わせて判断するのが難しそうです…。
先輩判断能力がどれくらい残っているかが目安になるわ。軽度なら社協の日常生活自立支援事業、しっかり低下しているなら成年後見。迷ったら地域包括に一緒に相談すれば大丈夫よ。
ケアマネができる適切な支援とは?
お金を直接扱えなくても、ケアマネだからこそできる支援はたくさんあります。大切なのは、利用者にとって安全で法的に問題のない仕組みへつなぐことです。
- 気づく・記録する「お金の管理が難しくなっている」サイン(支払いの滞り、通帳紛失、金銭トラブル)に気づき、客観的に記録する。
- 情報提供する成年後見制度や日常生活自立支援事業、代理人サービスなどの選択肢を本人・家族にわかりやすく説明する。
- 相談窓口へつなぐ地域包括支援センターや社会福祉協議会、専門職へ相談できるよう橋渡しをする。
- 関係者を調整する家族・後見人・金融機関・サービス事業者の間に立ち、役割分担を整理する。
- 継続して見守る導入後もモニタリングで状況を確認し、必要に応じて支援内容を見直す。
よくある質問(FAQ)
利用者本人から強くお願いされても引き出してはいけませんか?
少額の買い物の立て替えも避けるべきですか?
成年後見制度はどこに相談すればよいですか?
日常生活自立支援事業と成年後見制度は何が違いますか?
通帳やカードを「預かるだけ」なら問題ないですか?
- ケアマネは利用者の預金を引き出せない。理由は「法的権限がない」「横領を疑われるリスクが高い」「介護保険の業務範囲外で報酬も算定できない」の3点。
- 善意で代行すると、紛失・相続トラブル・不正取引扱いなど、自分を守れない事態になりかねない。
- 金銭管理が必要なら、成年後見制度・日常生活自立支援事業・代理人カード・家族の協力・専門職相談の5つを本人の状態に合わせて検討する。
- ケアマネの役割は「お金を扱う人」ではなく「安心できる仕組みへ導く人」。気づき→情報提供→相談窓口→調整→見守りの流れで支援する。
















