ケアマネは利用者を車に乗せることをして良いのか?

ケアマネジャー(介護支援専門員)は、要介護者の生活を支援する大切な存在です。
しかしその業務範囲には一定の制限があり、親切心からの行動でも「してはいけないこと」が存在します。
その中でもよく議論されるのが「利用者を自分の車に乗せて移動する行為」です。
一見すると善意に見えるこの行為も、トラブルや責任問題につながるおそれがあり、慎重な判断が必要です。
この記事では、ケアマネが利用者を車に乗せてはいけない理由や、その他の禁止行為について詳しく解説します。
ケアマネは利用者を車に乗せることはダメ
ケアマネが自家用車などで利用者を送迎することは、原則として禁止されています。介護保険制度の枠組みの中で、ケアマネは「介護サービスの調整や計画を立てる専門職」であり、送迎や移送といった実務的な介助は職務範囲外です。このような行為は、介護タクシーなどの指定を受けた事業者が行うべきものであり、ケアマネが行うと「制度外サービス」と見なされ、法的責任を問われることもあります。
さらに、車両事故が発生した場合には、利用者の安全確保だけでなく、損害賠償や保険の適用など、重大な問題に発展する可能性も否定できません。個人的な好意や関係性の深さから「つい車に乗せてしまう」ことがあるかもしれませんが、こうした行動はリスクを伴うため、いかなる場合でも避けるべきです。
ケアマネの禁止行為、やらない方が良い行為とは?
ケアマネは法令やガイドラインに基づいて業務を行う必要があります。
以下では、特に注意すべき禁止行為や避けるべき行動について紹介します。
利用者への身体介助を行う
ケアマネは介護計画の作成・調整を行う立場であり、実際の身体介護(入浴介助、移乗介助など)は担当外です。もちろん、事業所内でどうしても人手が足りない場面に遭遇することもあるかもしれませんが、その場しのぎで手を貸してしまうと、利用者との関係が曖昧になったり、事故が起きた際に業務外の行為として責任を問われたりする可能性があります。介護職や訪問ヘルパーに任せるべき仕事は、明確に線引きしておくことが大切です。
利用者の金銭管理や買い物の代行
ケアマネが利用者の通帳を預かったり、お金を借りたりすることは絶対にしてはいけません。これは倫理的な問題であると同時に、金銭トラブルの温床となります。買い物の代行も一見親切に見えますが、トラブルや誤解のもとになるため避けるべきです。どうしても必要な場合は、生活支援サービスや家族、地域包括支援センターと連携し、正当な手続きのもとで対応するのが適切です。
利用者との過度な私的関係
利用者やその家族と私的な関係を深めすぎると、ケアマネとしての客観性が失われるおそれがあります。特に、飲食をともにしたり、休日にプライベートで会うような関係になると、他の家族や職員との信頼関係にも悪影響が出ることがあります。あくまで「専門職」としての立場を守り、公私の区別をしっかりとつけることが重要です。
自身の判断でサービスを勧誘・変更する
ケアマネは中立・公平な立場であるべきですが、自分の所属する事業所の利益を優先して特定のサービスを強く勧めるなどの行為は不適切です。また、家族からの依頼があったとしても、本人の意思確認をせずにサービス内容を勝手に変更することも避けるべきです。本人の尊厳と意向を最優先に考え、手続きは正規のルートで行いましょう。
まとめ
ケアマネは高齢者やその家族を支える重要な存在ですが、業務の境界線を超えてしまうと、思わぬトラブルや責任問題に発展するリスクがあります。
特に「利用者を自家用車に乗せる」ことは、介護保険制度上の職務から逸脱しており、事故や苦情につながりかねない行為です。
介護の現場では時に親切心が先走ることもありますが、あくまで制度と倫理に則った対応を徹底することが、利用者の安全と信頼を守る第一歩です。
ケアマネとしての専門性を維持しながら、適切な支援を行っていきましょう。