ケアマネ退職で後任がいない時はどう対応すればよいか?

「ケアマネジャーが退職することになったけれど、後任が見つからない」──介護事業所でよくある悩みです。
居宅介護支援事業所は、ケアマネが不在になると利用者のケアプラン作成や給付管理ができなくなり、運営そのものに大きな影響が出ます。
さらに、利用者や家族にとってもサービス利用が継続できなくなる可能性があるため、適切な対応が欠かせません。
本記事では、ケアマネ退職で後任がいない場合に事業所が取るべき対応、利用者や家族への説明方法、行政への手続き、そして再発防止のための工夫を詳しく解説します。
ケアマネが退職する時に起こる問題とは?
利用者支援が途切れるリスク
居宅ケアマネは1人あたり25〜35件程度の利用者を担当します。退職と同時に後任がいないと、これらの利用者のケアプランが更新できず、給付管理にも支障が出ます。
事業所運営への影響
ケアマネがゼロになると、居宅介護支援事業所は運営基準を満たせず、廃止や休止を余儀なくされる可能性があります。法人にとっても大きな打撃です。
利用者・家族の不安
突然「ケアマネがいなくなる」と説明されれば、利用者や家族は「サービスは続けられるのか」「誰に相談すればいいのか」と不安になります。信頼関係を損なうリスクもあります。
ケアマネ退職で後任がいない時の対応方法
1. 速やかに利用者・家族へ説明する
退職が決まった時点で、速やかに利用者や家族へ説明することが大切です。
- ケアマネが退職する日
- 今後の対応方針(後任の有無、他事業所への引き継ぎなど)
- 利用者に不利益が出ないようにするための取り組み
誠実に説明することで、不安を軽減できます。
2. 行政(市町村)へ報告する
居宅介護支援事業所の人員基準に関わるため、後任が不在になる場合は必ず行政へ報告します。
- 一時的に基準を満たさない場合の扱い
- 廃止・休止の届け出の必要性
- 他事業所への引き継ぎ調整
市町村は利用者への影響を最小限にするための調整役としても機能するため、早めの相談が欠かせません。
3. 他事業所や地域包括支援センターと連携する
後任ケアマネがすぐに採用できない場合、近隣の居宅介護支援事業所や地域包括支援センターと連携し、利用者の受け入れを依頼します。
特に包括支援センターは緊急対応に協力してくれるケースもあるため、早めに連絡を取っておくことが重要です。
4. 引き継ぎ資料を作成する
退職するケアマネは、可能な限り利用者ごとの状況やケアプランの意向、家族の希望、サービス事業所との関係性をまとめておきましょう。
後任が不在でも、他事業所にスムーズに引き継げる資料があれば、利用者への影響を最小限に抑えられます。
5. 臨時的な対応を検討する
法人内に他のケアマネが在籍している場合は、兼務や一時的な応援体制をとることも可能です。ただし、担当件数が基準を大きく超えることは避けるべきです。
利用者・家族への説明文例
- 「担当ケアマネが○月末で退職することになりました。現在、後任を調整中ですが、間に合わない場合は○○事業所に一時的に引き継ぎます。サービスが中断しないよう対応しますのでご安心ください。」
- 「ご不安をおかけしますが、利用者様の生活が継続できるよう最善を尽くします。」
👉 誠実かつ具体的に伝えることが信頼維持につながります。
ケアマネ退職後に後任を確保するための工夫
採用活動を早めに始める
ケアマネ資格者は全国的に不足しており、採用に時間がかかります。退職予定が分かった時点で、求人媒体や転職エージェントを活用して後任探しを開始しましょう。
働きやすい環境を整える
- 担当件数の調整
- 残業削減の工夫
- 事務員やICT導入で業務負担を軽減
これらの改善がないと、採用してもすぐ辞めてしまう可能性があります。
法人内の異動や育成を活用
介護職や相談員からケアマネ資格を取得させ、内部人材を育成する仕組みを作るのも有効です。
再発防止のためにできること
- 定期的にケアマネの負担をチェックし、業務改善を進める
- 働きやすい人間関係やサポート体制を整える
- 定着率を高めるための研修・キャリアパスを用意する
「採用」よりも「定着」のほうが重要です。職員が辞めにくい環境づくりを進めましょう。
まとめ
ケアマネ退職で後任がいない場合、
- 利用者・家族に早めに説明する
- 行政へ報告し、対応方針を相談する
- 他事業所や包括支援センターに協力を依頼する
- 引き継ぎ資料を整え、サービスの継続性を確保する
といった対応が必要です。
ケアマネ不足の時代だからこそ、採用だけでなく 「働きやすい環境づくりと定着支援」 が欠かせません。
短期的な危機対応と長期的な人材確保の両方を意識して取り組むことが、事業所運営の安定につながります。