ケアマネが利用者の通帳を預かるのは大丈夫?法的根拠やリスク、正しい対応方法を解説

在宅介護を支援する中で「ケアマネジャーに通帳を預けてもいいの?」「実際にお金の管理をお願いできるの?」といった疑問や相談を受けることがあります。
しかし結論から言えば、ケアマネが利用者の通帳を預かることはできません。介護支援専門員(ケアマネジャー)の職務範囲や倫理規定、法的な制約を考えても、通帳や現金など財産管理を担うことは許されていないのです。
本記事では、なぜケアマネが通帳を預かれないのか、そのリスクやトラブル事例、そして正しい代替手段について詳しく解説します。
ケアマネの業務範囲とは?
ケアマネの正式名称は「介護支援専門員」です。主な役割は、介護保険サービスを利用するために必要なケアプラン(居宅サービス計画)を作成し、関係事業者や医療機関と連携して利用者の生活を支えることです。
- ケアプランの作成と見直し
- サービス担当者会議の開催
- 利用者や家族の相談対応
- サービス提供状況のモニタリング
- 医療・介護職との連絡調整
これらがケアマネの中心的な業務であり、金銭や財産の管理は業務範囲外です。
ケアマネが通帳を預かってはいけない理由
1. 法的に認められていない
介護支援専門員の業務は介護保険法や関連通知で明確に定められていますが、そこに「金銭管理」や「財産管理」は含まれていません。通帳や現金を預かることは、制度上の役割を逸脱する行為になります。
2. 倫理的リスクが大きい
通帳を預かることで「使い込み」「横領」といった不正の疑いをかけられるリスクが非常に高くなります。たとえ本人や家族に頼まれたとしても、第三者から見れば不適切と判断されかねません。
3. トラブル事例が多い
実際に、ケアマネが通帳を預かったことで金銭トラブルに発展した事例も報告されています。「お金がなくなった」「引き出し方が不明」といった疑いが生じると、信頼関係は一気に崩れてしまいます。
よくある誤解と危険なケース
「本人に頼まれたから大丈夫」
本人や家族からの依頼であっても、法的には認められません。「頼まれたからやった」では説明責任を果たせず、トラブル時にはケアマネが不利になります。
「一時的に預かるだけならいい?」
短期間でも「通帳を持つ」こと自体がリスクです。少額であっても横領の可能性を疑われるため、絶対に避けるべきです。
「他の職員がやっているから」
施設職員やヘルパーが慣習的に通帳を預かっているケースも見られますが、これも原則違反です。個人の裁量ではなく、制度上認められた仕組みを利用する必要があります。
通帳管理が必要なときの正しい方法
成年後見制度を利用する
判断能力が低下している方の財産管理は、成年後見制度を活用するのが正しい方法です。家庭裁判所が後見人を選任し、通帳や預貯金を法的に管理します。
日常生活自立支援事業を利用する
社会福祉協議会が実施する「日常生活自立支援事業」では、通帳や年金の出し入れ、公共料金の支払いといった日常的な金銭管理をサポートしてもらえます。
家族が代理で管理する
信頼できる家族が代理で管理し、必要に応じてケアマネや支援者と情報共有する形も多く取られます。この場合も「誰がどのように使ったか」を明確に記録しておくことが大切です。
ケアマネができるサポート
ケアマネは通帳そのものを預かることはできませんが、以下のような間接的な支援は可能です。
- 金銭管理に不安がある場合に、成年後見制度や日常生活自立支援事業を紹介する
- 家族に説明を行い、トラブルを防ぐための助言をする
- 介護サービス計画に「金銭管理支援」を位置づけ、適切な支援機関へつなぐ
つまり、通帳を預かる代わりに「適切な制度につなぐ」ことこそがケアマネの役割です。
まとめ
ケアマネが利用者の通帳を預かることは、法律上も倫理上も認められていません。
- ケアマネの業務範囲に財産管理は含まれない
- 通帳を預かると「横領」など不正の疑いを招く
- 成年後見制度や日常生活自立支援事業といった制度を活用するのが正しい方法
利用者や家族にとって「通帳を預かってほしい」という気持ちは理解できますが、ケアマネ自身が不正を疑われるリスクを避け、制度を通じて安全に支援を行うことが大切です。