ケアマネ業務のグレーゾーンとは?現場で迷いやすい境界線を徹底解説

ケアマネジャー(介護支援専門員)は、介護保険制度の中核を担う専門職です。
主な仕事はケアプランの作成やサービス調整ですが、実際の現場では「これはケアマネの仕事?」「ここまで対応していいの?」と迷う“グレーゾーン”が少なくありません。
業務範囲を超えた行為はトラブルの原因になりますが、利用者や家族のために柔軟な対応も求められます。
この記事では、ケアマネ業務のグレーゾーンを具体例とともに解説し、適切な対応の仕方を紹介します。
ケアマネの基本業務
まずはケアマネの正式な業務範囲を整理しておきましょう。
介護保険法に基づき、ケアマネの業務は主に以下です。
- 要介護認定の申請代行
- アセスメント(利用者の状況把握)
- ケアプランの作成・交付
- サービス担当者会議の開催・運営
- サービス利用後のモニタリング・評価
- 利用者・家族からの相談対応
- 介護保険に関する事務手続きの支援
これ以外は“本来業務外”であり、必要に応じて他職種や家族へつなぐべき領域となります。
ケアマネ業務のグレーゾーンになりやすい領域
1. 服薬管理や薬の受け取り
利用者から「薬の管理をしてほしい」と頼まれるケースは少なくありません。しかし服薬の管理や内服確認は原則として看護師や薬剤師の業務です。ケアマネが薬を仕分けたり内服を確認するのは業務外ですが、家族や訪問看護に調整を依頼することは可能です。
2. 金銭や通帳の管理
「銀行に行けないから代わりにお金を下ろしてほしい」と頼まれるケースもあります。しかし金銭管理や通帳の扱いは法律的にも非常にリスクが高く、ケアマネ業務の範囲外です。必要があれば成年後見制度や地域の生活支援サービスにつなぐことが適切です。
3. 家事援助・買い物代行
「ついでに買い物してきてほしい」「掃除を手伝ってほしい」といった依頼も現場ではありがちです。しかしこれらは訪問介護(生活援助)の業務であり、ケアマネが直接行うことはできません。ただし“生活上の課題を把握するための訪問時の確認”として最小限関わることはあります。
4. 医療的ケアの依頼
「痰の吸引をしてほしい」「褥瘡の処置をしてほしい」といった依頼は完全に看護師の領域です。ケアマネは医療職と連携し、訪問看護や医師につなぐ役割を担います。直接的に行為を行うのは業務外です。
5. 家族関係の調整や心理的支援
利用者と家族の間でトラブルが起きた場合、ケアマネに相談が集まることは多いです。一定の相談対応や調整はケアマネ業務に含まれますが、専門的な心理療法や法律相談は範囲外です。必要に応じて臨床心理士、弁護士、地域包括支援センターなどへつなぐことが大切です。
なぜグレーゾーンが生まれるのか?
- 利用者・家族から「身近な相談窓口」と見られている
- 現場の人員不足で“頼まれやすい”環境がある
- ケアマネ自身が「断りにくい」と感じる場面が多い
- 制度上の業務範囲と現実の生活支援の間にギャップがある
これらの要因から、現場ではどうしても“グレーな依頼”が発生します。
グレーゾーンに対応するポイント
1. 制度上できること・できないことを明確に伝える
「これはケアマネ業務ではないが、〇〇につなぐことはできます」と説明することで、利用者や家族の理解を得やすくなります。
2. 他職種や制度につなぐ
訪問介護、訪問看護、地域包括支援センター、成年後見制度など、必要に応じて他の専門職や制度を紹介し、課題を解決します。
3. 記録を残す
グレーゾーン対応をした場合は必ず記録を残すことが重要です。トラブル防止や監査対応にも役立ちます。
4. チームで共有する
困った依頼があれば、上司や同僚、サービス担当者会議で共有することで、ケアマネ個人が抱え込まない体制を整えましょう。
ケアマネが実際にやってはいけないこと
- 利用者の通帳や印鑑を預かる
- 金銭の受け渡しや買い物代行を恒常的に行う
- 医療行為を行う
- サービス担当者会議を開かずに勝手にプランを変更する
これらは法令違反やトラブルの原因となるため、明確に線を引く必要があります。
まとめ
ケアマネ業務のグレーゾーンは、制度と現場の間にある“すき間”から生まれます。
利用者や家族のために柔軟に対応する姿勢は大切ですが、金銭管理や医療行為などは業務範囲外です。
大切なのは「断る」のではなく、「適切なサービスにつなぐ」こと。
ケアマネが正しい判断をすることで、利用者の生活を守り、自身のリスクも回避できます。