ケアマネ資格が剥奪されるのはどんな時?実際の事例と再取得の可能性を解説

ケアマネ(介護支援専門員)は、利用者の生活を支える重要な専門職です。
しかし、一定の条件を満たさない場合や不正・違反行為を行った場合には、「資格停止」や「資格剥奪(登録の取消し)」といった処分を受けることがあります。
この記事では、ケアマネ資格が剥奪される主な理由と実際の事例、再取得の可否、そして処分を避けるための注意点をわかりやすく解説します。
ケアマネ資格の正式名称と登録制度
ケアマネの正式名称は「介護支援専門員」です。
資格は都道府県が管理しており、試験に合格した後、「介護支援専門員登録簿」に登録されることで初めて有資格者となります。
この登録が取り消されることを、一般的に「資格剥奪」と呼びます。
介護支援専門員登録は、次のような場合に取り消される可能性があります。
- 登録の際に虚偽の申請を行った場合
- 不正行為や法令違反をした場合
- 禁錮以上の刑に処せられた場合
- 認知機能の低下などで職務遂行が困難と判断された場合
ケアマネ資格が剥奪される主な原因
1. 不正請求・虚偽報告
最も多いのが、不正請求や虚偽記録に関する事例です。
たとえば、実際にはモニタリングを行っていないのに記録をでっち上げる、架空のケアプランを作成して報酬を請求するなどのケースが挙げられます。
実際に、過去には以下のような処分事例があります。
・モニタリング訪問を行わずに報告書を提出した
・架空のサービス利用を計上し介護報酬を請求した
・他人の名義でケアプランを作成した
これらはいずれも介護保険法違反とみなされ、登録取り消し(資格剥奪)や業務停止処分となる可能性があります。
2. 利用者や家族への金銭授受・不当な行為
利用者や家族から金品を受け取ることは、倫理規程違反として重く処分されます。
「お礼」として受け取ったつもりでも、職務上の立場を利用した行為とみなされることがあります。
また、以下のようなケースも剥奪・停止処分の対象になります。
・特定の事業所への利用誘導と引き換えに報酬を受け取った
・サービス提供業者と結託してキックバックを受けた
・公的書類を改ざんして報告した
介護支援専門員は「公正中立」であることが求められるため、金銭トラブルは最も重い処分の対象となります。
3. 個人情報の漏洩・守秘義務違反
利用者の情報を無断で第三者に伝える行為も、資格停止や剥奪の対象となります。
たとえば、同意なく家族や他の利用者に病歴を話す、SNSに写真や記録内容を投稿するなどは守秘義務違反です。
近年は、個人情報保護の観点からも処分が厳格化されています。
4. 無資格での業務従事・更新手続き忘れ
介護支援専門員証の有効期間は5年間です。
更新研修を受けずに期限切れとなった場合、資格が自動的に失効します。
また、資格を失効した状態で業務を続けた場合、「無資格従事」として処分対象になることもあります。
更新手続きは忘れずに行いましょう。
5. 刑事事件・重大な不祥事
交通事故による刑事罰や、暴力・窃盗などの犯罪行為によっても資格が剥奪される場合があります。
特に業務中に起こした事件・事故は社会的影響が大きく、介護支援専門員登録の取消しにつながる可能性があります。
実際にあったケアマネ資格剥奪の事例
ここでは、実際に行政処分となった例をいくつか紹介します。
- 【不正請求】
モニタリングを実施せず、記録を偽造して介護報酬を請求。
→ 登録取消し、事業所指定も同時に取り消し。 - 【個人情報漏洩】
利用者の家族関係や病状をSNSに投稿。
→ 業務停止3か月処分、再発防止研修を命令。 - 【キックバック】
福祉用具業者から商品紹介手数料を受け取る。
→ 介護支援専門員登録取消し処分。 - 【資格更新忘れ】
更新研修未受講のまま業務を継続。
→ 無資格業務として警告・指導。
いずれの事例も、故意でなくても「職務倫理違反」と判断されれば処分対象となります。
資格剥奪後に再取得はできるのか?
登録が取り消された場合、再度ケアマネ試験に合格すれば再取得は可能です。
ただし、取消理由が重大な法令違反や犯罪行為だった場合は、都道府県によっては再登録が認められないこともあります。
また、再登録時には行政が過去の処分履歴を確認するため、再取得までに数年の制限期間が設けられるケースもあります。
そのため、実務的には「一度の違反がキャリアを失う重大なリスク」になるといえます。
資格剥奪を防ぐための心得
- 記録を正確に残すこと
支援経過・モニタリングは「行った事実」を正確に記録し、後で訂正しないように注意します。 - 金銭の授受を一切行わない
「お礼」「寸志」などでも受け取らないことが原則です。 - 更新手続きを確実に行う
更新研修の案内は各都道府県の介護支援専門員協会から届くため、必ず確認しておきましょう。 - 倫理規程を再確認する
「介護支援専門員倫理綱領」では、利用者の利益を最優先に行動することが定められています。 - SNSや私的発言に注意する
プライバシーに関する投稿・会話はトラブルのもと。
たとえ善意であっても守秘義務を守る姿勢を徹底します。
まとめ
ケアマネ資格が剥奪される理由の多くは、日常業務の中での小さな気の緩みやルールの軽視から始まります。
不正請求や記録の改ざん、金銭授受などは「うっかり」では済まされません。
ケアマネは、介護サービスの中心的存在として高い倫理性が求められる専門職です。
日々の業務を誠実に行うことが、何よりの予防策になります。
もし万が一、行政から指導・監査の対象になった場合は、早めに上司や行政窓口に相談し、誤解を招かないよう正確に対応しましょう 。















