居宅介護支援費の逓減制とは?令和6年度の計算方法を解説

居宅介護支援事業所の運営で、収益に直結する重要なルールが「居宅介護支援費の逓減制(ていげんせい)」です。ケアマネジャー(介護支援専門員)1人あたりの担当件数が一定を超えると、超えた部分の報酬単位が下がる仕組みで、事業所経営を左右します。
この記事では、令和6年度(2024年4月)介護報酬改定で見直された最新の逓減制について、適用される件数・単位数・計算方法を、具体例とあわせてわかりやすく解説します。
- 逓減制の仕組みと、令和6年度改定での変更点
- 居宅介護支援費(Ⅰ)と(Ⅱ)で異なる適用件数
- 件数別の単位数と、具体的な計算例
- 逓減制が経営に与える影響と、事業所がとれる対策

逓減制って「35件を超えると報酬が90%・80%…」って聞いたことがあります。あれで合ってますか?

それは古い理解ね。令和6年度の改定で適用件数が緩和されて、今は「45件以上」から。しかも“◯%減”ではなく、超えた部分に低い単位を当てる方式なのよ。
居宅介護支援費の逓減制とは?
居宅介護支援費とは、ケアマネが利用者のケアプランを作成・管理することで、利用者1人あたり1か月ごとに算定される介護報酬です。この報酬には「逓減制」という仕組みがあり、ケアマネ1人あたりの取扱件数が一定数を超えると、超えた部分の単位数が低くなります。
件数を多く抱えるほど青天井で売上が増えるわけではなく、一定を超えると1件あたりの報酬が下がるため、収益性が落ちる──これが逓減制の基本的な考え方です。
令和6年度改定での変更点(重要)
令和6年度(2024年4月)の改定で、逓減制は大きく見直されました。実務に直結する変更点は次のとおりです。
- 逓減制が適用される件数が「40件以上」から「45件以上」に緩和(居宅介護支援費Ⅰ)
- ケアプランデータ連携システムの活用+事務職員の配置で「50件以上」まで緩和(居宅介護支援費Ⅱ)
- 要支援者の件数カウントが「2分の1」から「3分の1」に緩和
逓減は「全体の報酬が◯%になる」のではなく、標準の件数を超えた“その部分”だけ低い単位(ⅱ)(ⅲ)を当てる方式です。35件・90/80/70%という説明は旧制度の理解なので注意しましょう。なお、運営基準上の「標準担当件数(おおむね35件)」は人員配置の目安であり、逓減制の適用件数とは別物です。
逓減制が適用される担当件数と単位数
居宅介護支援費(Ⅰ)の場合
取扱件数が45件以上になると、件数の「部分」ごとに次の単位を算定します(1か月につき)。
| 区分(件数の部分) | 要介護1・2 | 要介護3・4・5 |
|---|---|---|
| (ⅰ)44件まで | 1,086単位 | 1,411単位 |
| (ⅱ)45件以上60件未満の部分 | 544単位 | 704単位 |
| (ⅲ)60件以上の部分 | 326単位 | 422単位 |
居宅介護支援費(Ⅱ)の場合
「ケアプランデータ連携システムの利用」と「事務職員の配置」の両方を満たす事業所は、逓減の開始が50件以上に緩和されます。
| 区分(件数の部分) | 要介護1・2 | 要介護3・4・5 |
|---|---|---|
| (ⅰ)49件まで | 1,086単位 | 1,411単位 |
| (ⅱ)50件以上60件未満の部分 | 527単位 | 683単位 |
| (ⅲ)60件以上の部分 | 316単位 | 410単位 |
上記は令和6年4月改定後の単位数です(要支援者は介護予防支援費で別単位、件数は3分の1でカウント)。算定にあたっては最新の厚生労働省資料・各種加算減算とあわせて必ず確認してください。
居宅介護支援費 逓減制の計算方法
基本の考え方
- 担当件数をカウントする要支援者は1人を3分の1として数えます。
- 件数を「部分」に分ける44件まで/45〜59件/60件以上のように区切ります。
- 部分ごとに単位を当てて合算する超えた部分だけ低い単位(ⅱ)(ⅲ)を使います。
計算例:50件を担当している場合(居宅介護支援費Ⅰ・全員要介護1・2と仮定)
| 件数の部分 | 計算 | 単位 |
|---|---|---|
| 44件まで | 1,086単位 × 44件 | 47,784単位 |
| 45〜50件(6件) | 544単位 × 6件 | 3,264単位 |
| 合計 | - | 51,048単位 |
仮に逓減がなければ「1,086単位 × 50件 = 54,300単位」。差し引き約3,252単位(月)が逓減による減少分となります。件数が60件を超えると、その部分にはさらに低い(ⅲ)326単位が適用されます。
たとえば62件を担当した場合は、「44件まで(1,086単位)+45〜59件の15件分(544単位)+60〜62件の3件分(326単位)」というように、件数を3つの部分に分けて積み上げて計算します。つまり、件数が増えるほど後半の1件あたりの報酬は大きく目減りしていくため、「件数を増やせば増やすほど儲かる」わけではない点が、逓減制を理解するうえで最も大切なポイントです。担当件数の上限ばかりを追うのではなく、1件あたりの単価が下がることを前提に、加算の算定や人員体制まで含めて収支を設計する視点が求められます。
逓減制が導入されている理由
逓減制は事業所にとっては収益減の要因ですが、利用者保護の側面もあります。
- ケアマネ1人に過度な件数を持たせないため
- 利用者支援の質を担保するため
- 過重労働を防ぎ、サービスの公平性を確保するため
逓減制による事業所経営への影響と対策

1人ケアマネの事業所だと、逓減の影響はやっぱり大きいですよね…?

そうね。でもデータ連携システムや事務員配置で(Ⅱ)を算定すれば適用が50件まで延びるし、特定事業所加算で収益を底上げする手もあるわよ。
主な対策
- ケアマネを複数配置する:標準件数を超えないよう担当を分担する
- ケアプランデータ連携システム+事務員配置で(Ⅱ)を算定:逓減開始を50件まで緩和できる
- 特定事業所加算を算定する:主任ケアマネ配置などで収益改善につなげる
- ICT・事務員で業務を効率化:ケアマネが本来業務に集中できる体制をつくる
よくある質問(FAQ)
逓減制は「報酬が90%・80%に減る」仕組みですか?
いいえ。現行は全体を一律に減率するのではなく、件数の「超えた部分」に低い単位(ⅱ)(ⅲ)を当てる方式です。令和6年度改定で適用は45件以上(居宅Ⅰ)に緩和されました。
要支援者も1件としてカウントされますか?
要支援者は令和6年度改定で「3分の1」としてカウントするよう緩和されました(従来は2分の1)。担当件数の管理が以前より少しゆとりを持てる形になっています。
居宅介護支援費(Ⅱ)を算定する条件は?
「ケアプランデータ連携システムの利用」と「事務職員の配置」を満たすことが要件です。これにより逓減の開始が50件以上に緩和されます。
標準担当件数の「35件」と逓減制の関係は?
「おおむね35件」は運営基準上の人員配置の目安で、逓減制の適用件数(45件・50件)とは別の基準です。混同しないよう注意しましょう。
まとめ|逓減制は「45件以上」から。部分ごとに単位が下がる
居宅介護支援費の逓減制は、令和6年度改定で適用件数が緩和され、現在は居宅介護支援費(Ⅰ)で45件以上、(Ⅱ)で50件以上から、超えた部分に低い単位が適用される仕組みです。
- 逓減制=取扱件数が一定を超えると、超えた部分の単位が下がる仕組み
- 居宅Ⅰは45件以上、データ連携+事務員配置の居宅Ⅱは50件以上から逓減
- 「全体◯%減」ではなく、部分ごとに(ⅱ)(ⅲ)の低い単位を当てる
- 要支援者は3分の1カウント。対策は複数配置・データ連携・特定事業所加算など
逓減制を正しく理解し、件数調整や加算の活用、ICT・事務員の導入を組み合わせることが、事業所運営の安定とケアマネの働きやすさにつながります。
















