ケアマネが服薬管理をしてはいけない理由とは?別の方法も紹介

ケアマネジャー(介護支援専門員)は、介護サービス利用者やその家族にとって生活を支える大切な存在です。
しかし、実際の現場では「服薬管理もやってほしい」「薬の確認までお願いできないか」といった要望を受けることがあります。
利用者の安全を守る立場として、ケアマネが支援したいと思うのは自然なことですが、結論から言えばケアマネは直接的に服薬管理をしてはいけない立場にあります。
これは単に「できないから」ではなく、法的な制約・専門性・責任の所在 といった理由が背景にあるのです。
この記事では、なぜケアマネが服薬管理をしてはいけないのかを分かりやすく解説し、利用者に服薬支援が必要な場合にケアマネが取るべき対応や別の方法についても紹介します。
現場での悩みを解消できるヒントとして、ぜひ参考にしてください。
ケアマネの業務範囲とは?服薬管理との違いを整理
ケアマネの業務範囲は介護保険法で明確に規定されており、基本的には「ケアプラン作成」「サービス調整」「モニタリング」「給付管理」に限定されています。
つまりケアマネの本質的な役割は、直接的な介護行為を行うのではなく、利用者に必要な介護・医療サービスをつなぎ、最適な生活環境を整えることにあります。
一方で服薬管理とは、薬の内容や服薬状況を確認したり、場合によっては服薬介助や投与を行ったりする行為を指します。
これは医療行為や介護行為の一部であり、医師・看護師・薬剤師・介護職といった専門職の業務範囲に属します。
ケアマネはあくまで「支援調整役」であり、現場で服薬を直接サポートすることは法律上認められていません。
ケアマネが服薬管理をしてはいけない理由
法的に認められていないため
介護支援専門員の業務内容は「介護保険法施行規則」などで規定されており、利用者の生活支援に必要なサービス調整に特化しています。服薬管理や投与は医師や看護師、薬剤師など医療資格を有する者の業務に該当するため、ケアマネが行うと業務範囲逸脱となり、法的な問題につながる可能性があります。
専門的な知識が必要だから
薬には種類ごとの作用、副作用、飲み合わせのリスクがあります。服薬ミスによる健康被害は命に関わることもあり、薬学的知識を持つ薬剤師や医療従事者が管理するのが前提です。ケアマネは制度や生活支援の専門家であり、薬学的専門性を担保する立場ではないため、直接の服薬管理は適切ではありません。
責任の所在が曖昧になるため
もしケアマネが服薬管理を行い、誤薬や飲み忘れ、重篤な副作用などが発生した場合、その責任を誰が負うのかという大きな問題になります。利用者・家族・事業所との信頼関係を守るためにも、ケアマネは自らの職責を逸脱しないことが大切です。
保険制度上の算定対象にならないため
介護保険や医療保険の制度において、ケアマネが服薬管理を行っても報酬は算定できません。つまり業務として位置づけられていないため、事業所としても正式に行うことはできないのです。
服薬支援が必要な場合にケアマネができること
ケアマネが服薬管理を直接行えないからといって、何もできないわけではありません。
むしろ「どのサービスを導入すれば利用者が安全に服薬できるか」を調整するのがケアマネの役割です。
ここでは現場で使える具体的な方法を紹介します。
訪問看護を導入する
訪問看護師は医師の指示のもと、服薬状況の確認や服薬指導、副作用のチェックなどを行うことが可能です。利用者の病状に応じて服薬支援が必要な場合は、訪問看護をケアプランに組み込むのが有効です。
訪問介護を活用する
ホームヘルパーによる訪問介護サービスでは、服薬確認や介助が認められています。食事と一緒に薬を出す、服薬カレンダーを一緒に確認するなど、日常生活の中で安全な服薬を支えることが可能です。
薬剤師の訪問指導を利用する
居宅療養管理指導という制度を活用すれば、薬剤師が利用者宅を訪問し、薬のセットや残薬確認、飲み合わせの指導を行ってくれます。専門的な薬学的視点を取り入れることで、服薬ミスを防ぎやすくなります。
服薬支援ツールの導入
服薬カレンダーや分包された薬ケース、アラーム付き服薬支援機器、スマホアプリなどを活用することで、服薬忘れや誤薬を防止できます。特に独居高齢者や認知症高齢者には有効です。
ケアマネが果たすべき役割とは?
ケアマネが担うべきは「直接の服薬管理」ではなく、服薬支援の仕組みを作り、安全に継続できる環境を整えること です。
利用者の状況を正しくアセスメントし、「この人には訪問看護が必要か」「薬剤師の介入が望ましいか」「訪問介護で十分か」を判断してプランを組み立てます。
また、利用者や家族に対して「ケアマネは服薬管理を直接行えない理由」を説明し、代替手段を分かりやすく提示することも重要です。
こうすることで利用者や家族の不安を和らげ、信頼関係を維持できます。
さらに、多職種間の連携を調整し、情報共有をスムーズに行うことで、服薬支援体制全体を強化する役割を果たすことができます。
まとめ
ケアマネが服薬管理をしてはいけないのは、法的に業務外であること、薬学的専門知識を持たないこと、責任の所在が曖昧になること、そして制度上報酬請求ができないことが理由です。
しかし「服薬支援に必要なサービスを見極め、適切につなげる」ことこそがケアマネの大切な仕事です。
訪問看護、訪問介護、薬剤師の居宅療養管理指導、服薬支援ツールなどの選択肢を組み合わせれば、利用者が安心して服薬できる環境を整えることができます。
ケアマネは「直接行う人」ではなく「仕組みを整える人」。
その立場を理解し、制度を正しく活用することが、利用者の安全と生活の質を守る一番の方法といえるでしょう。