居宅介護支援事業所の人員基準を分かりやすく解説

居宅介護支援事業所を立ち上げたり運営したりする際に必ず確認しなければならないのが「人員基準」です。
介護保険法に基づき、人員基準を満たさなければ指定を受けることができず、事業所の運営が認められません。
しかし「ケアマネは何人必要?」「管理者はどうすればいい?」「非常勤は認められるの?」と疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、居宅介護支援事業所の人員基準について、法律の内容を一般の方にも分かりやすく解説します。
居宅介護支援事業所の人員基準とは?
人員基準とは、介護サービスを提供するために必要な職種・人数・資格などを国が定めたルールです。
事業所はこの基準を満たすことで初めて指定を受け、介護保険制度に基づいたサービスを提供できます。
居宅介護支援事業所の人員基準の中心は「介護支援専門員(ケアマネジャー)」と「管理者」の配置です。
加えて、適切な運営を行うために必要な勤務体制や研修要件なども含まれています。
管理者の配置基準
居宅介護支援事業所には管理者を1名以上配置することが必須です。
管理者は事業所全体の運営責任を担い、職員管理や業務調整、行政への対応などを行います。
管理者の要件
- 介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格を持っていること
- 常勤であること(非常勤は不可)
- 事業所の運営に責任を持ち、実際に業務に関わること
形式的な「名義貸し」や兼務で形だけの配置は認められていません。監査でも「実際に管理者として働いているか」が厳しく確認されます。
介護支援専門員(ケアマネジャー)の配置基準
居宅介護支援事業所には、常勤換算で1名以上のケアマネを配置する必要があります。
ただし、実際には利用者を担当する件数に応じて十分な人数が必要となります。
担当件数と配置人数の目安
- ケアマネ1人あたりの標準担当件数:おおむね35件まで
- 利用者が増える場合:担当件数に応じてケアマネを増員すること
例えば利用者が70人いれば、ケアマネは常勤換算で2人以上必要になります。
常勤・非常勤の考え方
ケアマネは常勤換算で配置すればよいため、非常勤職員でも一定の条件を満たせばカウントされます。
- 1日4時間勤務の非常勤が2人いれば「常勤1人分」として換算可能
- ただし利用者数に見合う勤務体制であることが前提
事業所によっては、常勤と非常勤を組み合わせて人員基準を満たすケースもあります。
特定事業所加算と人員基準
「特定事業所加算」を取得する場合、通常よりも厳しい人員基準が求められます。例えば以下のような要件があります。
- ケアマネが複数名配置されていること
- 主任ケアマネが1名以上在籍していること
- 定期的な研修や会議体制が整っていること
加算を取得すると収益性が高まる反面、人員体制の整備や研修コストがかかる点に注意が必要です。
人員基準を満たせない場合のリスク
人員基準を下回ると、居宅介護支援事業所としての指定を受けられない、あるいは取り消しとなる可能性があります。
特にケアマネの退職などで一時的に人員不足になるケースは多く、利用者への支援が滞らないよう速やかに補充する必要があります。
人員基準を維持するための工夫
- ケアマネの採用だけでなく、定着率を高める取り組みを行う
- ICTや事務員を活用し、ケアマネの業務負担を減らす
- 主任ケアマネを育成し、将来的な加算取得を見据える
- 退職や欠員に備え、法人内での応援体制を確保する
事業所の安定運営には「採用」と「定着」の両輪が欠かせません。
まとめ
居宅介護支援事業所の人員基準は、
- 管理者1名(ケアマネ資格、常勤)
- 常勤換算で1名以上の介護支援専門員
- 利用者数に応じて必要な人数を配置
- 非常勤も換算可能だが体制の実効性が求められる
- 特定事業所加算を取得する場合はより厳格な要件がある
という内容になっています。
人員基準は単なるルールではなく、利用者に安心・安全なケアマネジメントを提供するための仕組みです。事業所運営者やケアマネは、制度を正しく理解し、安定した体制を整えることが大切です。