高齢者虐待防止法とは?5つの虐待の種類と通報のルール

「親を介護している家族が、つい怒鳴ってしまうのも虐待になるの?」「近所の高齢者の様子が気になるけれど、どこに知らせればいいの?」。高齢者への虐待は、家庭でも施設でも起こりうる身近な問題です。
高齢者虐待防止法は、虐待から高齢者を守るとともに、介護する家族を支えることを目的とした法律です。この記事では、法律の目的、5つの虐待の種類、通報のルール、市区町村の対応の流れ、家族が虐待を防ぐためにできることを解説します。
- 高齢者虐待防止法の目的と、対象になる虐待
- 5つの虐待の種類と具体例
- 通報の義務と、通報先・通報した人の保護
- 通報を受けた市区町村の対応の流れ
- 介護する家族が虐待を防ぐためにできること
高齢者虐待防止法とは?目的と対象
高齢者虐待防止法の正式名称は、「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」です。2006年(平成18年)4月に施行されました。
この法律で「高齢者」は65歳以上の人を指し、虐待をする人によって、次の2つに分けて定めています。
| 区分 | 虐待をする人 |
|---|---|
| 養護者による虐待 | 家族や親族、同居人など、高齢者を世話している人 |
| 養介護施設従事者等による虐待 | 介護施設や介護サービス事業所の職員 |
この法律の特徴は、虐待を防ぐだけでなく、介護する家族(養護者)を支援することを目的に含めている点です。虐待の背景には、介護疲れや孤立、経済的な困窮があることが多いためです。
新人虐待を防ぐ法律なのに、虐待をしてしまった家族も支援するんですか?
先輩そうなの。介護に追い詰められた家族を責めるだけでは、虐待はなくならないのよ。家族を支えることが、結果として高齢者を守ることにつながる、という考え方の法律なの。
高齢者虐待防止法が定める5つの虐待の種類
| 種類 | 具体例 |
|---|---|
| 身体的虐待 | 叩く、つねる、無理に押さえつける、正当な理由なくベッドに縛りつける |
| 介護・世話の放棄・放任(ネグレクト) | 食事や水分を十分に与えない、おむつを替えず不衛生にする、必要な受診をさせない |
| 心理的虐待 | 怒鳴る、ののしる、無視する、子ども扱いして恥をかかせる |
| 性的虐待 | わいせつな行為をする、させる、排泄の失敗を罰として下半身を裸にして放置する |
| 経済的虐待 | 本人の年金や預金を勝手に使う、本人が望む生活費を渡さない、財産を無断で処分する |
通報の義務と、通報先
高齢者虐待防止法では、虐待を受けたと思われる高齢者を見つけた人に、市区町村への通報を求めています。
- 養護者による虐待:高齢者の生命や身体に重大な危険が生じている場合は、見つけた人に通報の義務がある。それ以外の場合も、通報するよう努める
- 施設や事業所の職員による虐待:同じ施設などで働く職員が見つけた場合は、通報の義務がある
- 専門職の役割:介護職や医師、保健師など、高齢者の福祉に関わる専門職は、虐待の早期発見に努める
通報先は、市区町村の高齢者福祉の担当課や、地域包括支援センターです。通報した人の名前などが漏れないよう、市区町村には守秘義務があります。施設の職員が通報したことを理由に、解雇などの不利益な扱いをすることは禁止されています。
通報を受けた市区町村の対応の流れ
- 相談・通報の受付市区町村や地域包括支援センターが、通報の内容を受け付けます。
- 事実の確認訪問や関係者からの聞き取りで、高齢者の安全と状況を確認します。
- 緊急性の判断命や安全に危険がある場合は、施設への一時的な保護などを検討します。
- 支援の計画高齢者を守る方法と、介護する家族を支える方法を関係機関と話し合います。
- 見守りと評価支援の結果を確認し、必要に応じて見直します。
介護施設や事業所に求められる虐待防止の取り組み
2024年4月からは、すべての介護サービス事業所に、虐待防止のための委員会の開催、指針の整備、職員への研修、担当者の設置が義務づけられています。取り組みを行っていない事業所は、介護報酬が減算される仕組みもあります。
新人介護する家族が「限界」と感じているときは、どう支えればいいですか?
先輩まずは家族の気持ちを否定せずに聞くこと。そのうえで、ショートステイやデイサービスで介護から離れる時間をつくる、地域包括支援センターにつなぐなど、家族が一人で抱えない方法を一緒に考えるのが大切よ。
介護する家族が虐待を防ぐためにできること
- 介護の負担を一人で抱えず、きょうだいや親族と分担する
- デイサービスやショートステイを使い、介護から離れる時間をつくる
- イライラが続くときは、ケアマネや地域包括支援センターに相談する
- 認知症の症状について学び、本人の行動の理由を知る
- 家族の会など、同じ立場の人と話せる場を持つ
虐待かもしれないと感じたときの家族の行動
- 高齢者の安全を確認するけがや命に関わる危険がある場合は、すぐに救急や警察に連絡します。
- 気づいたことをメモする日時や様子を、見たまま記録しておきます。
- 相談窓口に連絡する地域包括支援センターや市区町村に相談します。担当のケアマネがいれば、ケアマネにも伝えます。
家族の中で起きている場合は、介護している人を責めるより、支援につなげることを優先しましょう。
よくある質問(FAQ)
高齢者虐待防止法に罰則はありますか?
匿名で通報できますか?
65歳未満の人への虐待はどうなりますか?
身体拘束は虐待になりますか?
ケアマネが虐待に気づいた場合はどうしますか?
- 高齢者虐待防止法は2006年4月に施行され、65歳以上の高齢者を虐待から守り、介護する家族を支援することを目的とする
- 虐待は、身体的虐待、介護・世話の放棄、心理的虐待、性的虐待、経済的虐待の5つに分けられる
- 生命や身体に重大な危険がある場合や、施設の職員が職場で見つけた場合には通報の義務がある
- 通報先は市区町村や地域包括支援センターで、確証がなくても相談してよい
- 家族は一人で抱えず、サービスや相談窓口を使って介護の負担を軽くすることが虐待の予防になる
















