高額医療合算介護サービス費とは?わかりやすく解説

介護保険や医療保険を利用していると、それぞれの自己負担がかさんで家計を圧迫することがあります。特に高齢者世帯や介護と医療を同時に利用している家庭では、毎月の費用が大きな負担になり「本当に払い続けられるのか」と不安を抱くことも少なくありません。
そんなときに役立つのが**「高額医療合算介護サービス費」**です。この制度を利用することで、医療と介護の自己負担を合算し、一定額を超えた分が払い戻されます。
本記事では、高額医療合算介護サービス費の仕組み、対象者、上限額、申請方法、注意点をわかりやすく解説します。介護保険や医療費に悩む方、ケアマネジャーやご家族にとっても役立つ内容です。
高額医療合算介護サービス費とは?
制度の概要
高額医療合算介護サービス費とは、1年間(8月〜翌年7月)に支払った医療費と介護費の自己負担額を合算し、その合計額が所得区分ごとの上限額を超えた場合に、超過分が払い戻される制度です。
つまり、
- 高額療養費制度 → 医療費のみ
- 高額介護サービス費制度 → 介護費のみ
- 高額医療合算介護サービス費 → 医療+介護の合算
という違いがあります。
制度の目的
医療と介護の両方にかかる負担が重くなった世帯を救済し、安心して生活を続けられるようにすることです。
高額医療合算介護サービス費の対象者
- 医療保険と介護保険の両方を利用している人
- 世帯単位で判定される(同じ世帯員の自己負担を合算できる)
- 要介護認定を受けて介護サービスを利用し、同時に医療機関にかかっている場合に該当
例:
・要介護3でデイサービスを利用している高齢者が入院した場合
・夫が通院治療、妻が介護サービスを利用している世帯
自己負担上限額(年間)
高額医療合算介護サービス費の上限額は、世帯の所得状況に応じて決まります。以下は代表的な区分です。
- 生活保護・住民税非課税世帯:34,000円
- 低所得者(非課税世帯の一部):24,600円〜34,000円
- 一般(多くの高齢者世帯):56,000円
- 現役並み所得者(課税所得145万円以上、年収約383万円〜):67,000円〜212,000円
※高額介護サービス費や高額療養費で既に払い戻しを受けている金額は差し引かれて計算されます。
支給の流れと申請方法
支給の流れ
- 8月から翌年7月までにかかった自己負担額を集計
- 医療保険者(健康保険組合・国保など)と介護保険者(市区町村)が連携して判定
- 上限額を超えていれば、該当世帯に通知が届く
- 申請後、超過分が払い戻される
申請方法
- 通知を受けたら、同封されている申請書を記入し提出
- 必要に応じて、医療費通知や領収書を提出
- 申請先は、主に加入している医療保険者(健康保険組合や国保組合など)
注意点
- 自動払い戻しではなく、申請が必要
- 医療と介護の両方にかかった費用が対象
- 払い戻しは年度ごと(8月〜翌7月)に1回
高額医療合算介護サービス費の計算例
ケース1:一般所得世帯
- 介護サービスの自己負担:月30,000円(年間360,000円)
- 医療費の自己負担:月20,000円(年間240,000円)
- 合計:年間600,000円
一般所得の上限は年間56,000円
→ 600,000円−56,000円=544,000円が払い戻し対象
ケース2:低所得世帯
- 介護:年間100,000円
- 医療:年間120,000円
- 合計:年間220,000円
低所得者の上限は年間24,600円
→ 220,000円−24,600円=195,400円が払い戻し対象
高額介護サービス費・高額療養費との違いを整理
制度名 | 対象 | 判定期間 | 払い戻し基準 |
---|---|---|---|
高額療養費制度 | 医療費 | 1か月ごと | 所得区分ごとの上限を超えた分 |
高額介護サービス費制度 | 介護費 | 1か月ごと | 所得区分ごとの上限を超えた分 |
高額医療合算介護サービス費 | 医療+介護 | 1年間(8月〜翌7月) | 年間の上限を超えた分 |
このように、高額医療合算介護サービス費は年単位で判定される点が特徴です。

制度を利用するメリット
- 介護と医療のダブル負担を軽減できる
- 世帯合算ができるため、夫婦や家族で利用している場合に有効
- 払い戻しにより、実質的な負担を軽減できる
制度利用時の注意点
- 食費や居住費、日常生活費は対象外
- 医療保険・介護保険の両方を利用していることが条件
- 年度をまたいでの計算はできない(8月〜翌7月で区切り)
- 申請を忘れると払い戻しを受けられない
ケアマネジャーが押さえるべきポイント
- 利用者や家族に「高額医療合算介護サービス費」の存在を説明する
- 医療と介護を同時に利用している人に積極的に案内
- 高額介護サービス費との違いを整理して伝える
- 年度ごとの判定であることを伝え、申請のタイミングをサポート
よくある質問(Q&A)
Q:申請しなくても自動で払い戻されますか?
A:申請が必要です。通知が届いたら忘れずに提出してください。
Q:医療費の領収書は必要ですか?
A:医療保険者がデータを持っていますが、場合によっては提出を求められることがあります。
Q:食費や居住費は対象になりますか?
A:いいえ。あくまで医療費と介護サービス費の自己負担分のみが対象です。
まとめ
高額医療合算介護サービス費とは、医療と介護にかかる自己負担を合算し、年間の上限を超えた分が払い戻される制度です。
- 対象は医療保険と介護保険を利用している人
- 判定期間は8月〜翌年7月までの1年間
- 所得区分ごとに自己負担上限が決まっている
- 食費や居住費は対象外
- 申請しなければ払い戻しを受けられない
介護や医療の費用負担が大きい家庭にとって、この制度は大きな助けとなります。ケアマネジャーや家族は、利用者が不安なくサービスを受けられるように、制度の活用を積極的にサポートしていきましょう。