ケアプランデータ連携システムは活用できる?メリット・デメリットを解説

2021年度の介護報酬改定以降、厚生労働省が推進している「ケアプランデータ連携システム」は、ケアマネジャーや介護サービス事業所の業務効率化を目的とした新しい仕組みです。
これまではFAXや紙でやり取りしていたケアプラン関連の帳票を、電子データとしてセキュアに送受信できるようになる点が大きな特徴です。
しかし、現場のケアマネジャーにとっては「導入コストや操作性は?」「本当に使いやすいの?」といった疑問も少なくありません。
本記事では、ケアプランデータ連携システムの仕組み、導入によるメリット・デメリットを整理し、現場での活用可能性についてわかりやすく解説します。
ケアプランデータ連携システムとは?
ケアプランデータ連携システムとは、居宅介護支援事業所と各介護サービス事業所との間で、ケアプランに関するデータを安全にやり取りするための国主導の仕組みです。
従来は第6表や第7表などを紙に印刷し、FAXや郵送で共有するのが一般的でしたが、このシステムを使うことで電子データをそのまま送受信できるようになります。
利用できる帳票はケアプラン(第1~7表)だけでなく、サービス利用票や提供票なども含まれます。
これにより、入力や転記の手間、誤記入や送付漏れのリスクを軽減でき、事業所間の情報連携が迅速かつ効率的になることが期待されています。
ケアプランデータ連携システムのメリット
業務効率化と転記ミスの削減
これまではFAXで送られてきた提供票を見ながら、サービス事業所側が手作業で入力していました。ケアプランデータ連携システムを使えば、データを直接取り込めるため転記の手間が省け、入力ミスのリスクも大幅に減ります。ケアマネジャーにとっては、毎月の更新業務の負担軽減につながります。
情報共有の迅速化
紙やFAXに比べて、電子データでのやり取りはスピーディーです。サービス事業所側は即時にデータを確認できるため、提供票や利用票の反映も早くなり、利用者に対するサービス提供の準備もスムーズに進められます。急な変更や追加対応が必要な場合も、システムを介したデータ送信なら対応がしやすくなります。
セキュリティの確保
FAXでは誤送信のリスクが常にありましたが、ケアプランデータ連携システムでは厚労省が定めるセキュリティ基準に基づいて運用されているため、個人情報の漏洩リスクが低減します。特に介護分野は個人情報のかたまりともいえるため、セキュリティ強化は大きなメリットです。
ケアプランデータ連携システムのデメリット
導入・運用コストがかかる
システムを利用するには、対応している介護ソフトの導入やアップデートが必要です。そのため事業所規模が小さい場合や予算に余裕がない場合は、初期費用やランニングコストが負担になるケースがあります。また、ソフトが未対応の場合には利用自体が難しい点もネックです。
利用環境の整備が必要
インターネット環境が不安定な地域や、ICTに慣れていない職員が多い事業所では、運用に戸惑いが生じやすいです。特に高齢のケアマネジャーや小規模事業所にとっては、従来のFAXに比べて使いづらいと感じることも少なくありません。導入後は職員への研修やサポート体制を整える必要があります。
利用率がまだ低い
国が推進しているとはいえ、現状では利用率が高いとはいえません。システムを導入しても、取引先のサービス事業所が未対応の場合は結局FAXや紙に戻らざるを得ないこともあります。全国的に普及が進まないと、十分な効果を発揮しにくい点は大きな課題です。
ケアマネジャーが活用するためのポイント
取引先事業所の対応状況を確認する
導入を検討する前に、まずは連携しているサービス事業所がどの程度対応しているかを確認することが大切です。主要な事業所が未対応であれば、導入しても効果は限定的です。地域の情報交換会や包括支援センターを通じて情報を収集しましょう。
職員研修やマニュアル整備を行う
システムを使いこなすには、職員のITリテラシーにばらつきがあることを前提に研修を行うことが重要です。また、導入時には操作マニュアルを整備し、職員全員が同じ手順で使えるようにすることで定着がスムーズになります。
紙やFAXとの併用も視野に入れる
当面はすべてをデータ連携に移行できるわけではないため、紙やFAXとのハイブリッド運用が現実的です。ケアマネジャーは事業所ごとの対応状況を把握し、最適な方法で情報共有を行う柔軟さが求められます。
まとめ
ケアプランデータ連携システムは、業務効率化やセキュリティ強化といった大きなメリットがある一方、導入コストや対応率の低さといった課題も残されています。
ケアマネジャーとしては、システムを過信せず、取引先の対応状況や事業所の体制に合わせて上手に活用していくことが重要です。
今後は国の普及促進策やソフト会社の対応が進むことで利便性が高まり、標準的な仕組みとして定着する可能性があります。
現時点ではメリットとデメリットを天秤にかけながら、自事業所にとって最適な導入タイミングを見極めていきましょう。