認知症の行方不明を防ぐ備え|GPSと見守りネットワーク

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「おじいちゃんがいない」——この電話が入った瞬間から、時間との勝負が始まります。認知症の人の行方不明は、発見が遅れるほど命に関わります。しかし多くの家庭では、いなくなってから初めて対策を考え始めます。ケアマネジャーにできる最大の仕事は、起きてからの対応ではなく、起きる前の備えを整えておくことです。この記事では、事前の備えと、実際に行方不明になったときの動き方を整理します。

この記事でわかること
  • 行方不明のリスクが高い人の特徴
  • 事前に備えておく5つのこと
  • GPS・見守り機器の種類と選び方
  • 実際に行方不明になったときの初動
  • 「徘徊」という言葉をめぐる考え方
目次

リスクが高いのはどんな人か

行方不明は、重度の認知症の人にだけ起きるわけではありません。むしろ「まだ自分で歩ける」段階の人ほど起きやすいという特徴があります。

  • 歩行が自立しており、屋外へ1人で出られる
  • 見当識に低下があり、道順が分からなくなることがある
  • 過去に道に迷った経験がある
  • 「家に帰る」「会社に行く」など、明確な目的を口にする
  • 夕方から夜にかけて落ち着かなくなる
  • 環境が変わった直後(転居、入退院、サービス開始)
  • 日中独居の時間帯がある
ポイント:本人には目的がある周囲からは「あてもなく歩き回っている」ように見えても、本人には必ず目的があります。昔の家に帰る、子どもを迎えに行く、職場へ向かう。この目的を知っておくと、行き先の見当がつきやすくなります。
新人ケアマネ新人

「徘徊」という言葉は使わないほうがよいと聞きました。なぜですか?

ベテランケアマネ先輩

「あてもなくうろつく」という意味を含むからね。本人には理由があるのに、その言葉を使うと目的がないことにされてしまうの。自治体でも「ひとり歩き」「行方不明」と言い換えるところが増えているわ。記録に書く言葉も、少し意識するといいわね。

事前に備えておく5つのこと

  • 身元が分かるものを持ってもらう衣類や靴、持ち物への記名。名前入りのラベル、キーホルダー、GPS端末など。玄関の見える場所に連絡先を貼るのも有効です。
  • 最近の写真を用意しておく全身が写った、直近の服装が分かる写真。捜索願を出すときに必ず必要になります。家族のスマートフォンに保存してもらいます。
  • 自治体の見守りネットワークに登録する多くの市町村に、事前登録制の見守り・SOSネットワークがあります。登録しておくと、行方不明時に地域へ情報が流れます。
  • 行き先の候補をリスト化しておく以前住んでいた家、勤めていた職場、実家、よく行く店。家族から聞き取り、支援経過に残しておきます。
  • 緊急時の連絡手順を決めておく誰が、どの順番で、どこに連絡するか。家族・事業所・ケアマネ・警察の順序を紙に書いて共有します。
注意:自治体の制度は事前登録が前提見守りネットワークやGPS機器の貸与・助成は、多くが事前登録・事前申請を必要とします。いなくなってからでは間に合いません。リスクを感じた時点で、市町村の制度を確認して登録を勧めてください。

GPS・見守り機器の選び方

種類特徴課題
GPS端末(携帯型)リアルタイムに位置が分かる持って出ないと意味がない。充電が必要
靴に入れるGPS本人が意識せず携帯できる別の靴を履くと機能しない
見守りシール・タグ安価。発見者が読み取ると連絡がつく読み取られないと機能しない
玄関センサー外出したことを即座に知らせる出た後の位置は分からない
見守りカメラ在宅時の状況を把握できるプライバシーへの配慮が必要

どの機器にも「本人が持って出なければ意味がない」という共通の課題があります。複数を組み合わせる、普段使っている持ち物に仕込むなどの工夫が要ります。

注意:機器の使用は本人の尊厳にも関わる位置情報の把握は、安全の確保と引き換えに、本人の行動を常時監視することにもなります。可能な限り本人に説明し、理解を得る努力をしてください。また、鳴るたびに制止するような使い方は、実質的なスピーチロックになります。

行方不明になったときの初動

  • 警察への届出をためらわない「まだ数時間だから」と待つのが最も危険です。高齢者の行方不明は早期の届出が原則です。家族に届出を促します。
  • 家の中と敷地内を確認する屋内の押し入れ、風呂場、庭、車の中。近隣で発見される例も多くあります。
  • 行き先候補をリストで共有する事前に作っておいたリストを家族・警察に伝えます。
  • サービス事業所へ情報共有するデイの送迎ルート、訪問先の周辺など、事業所が持つ情報が役立つことがあります。
  • 地域包括支援センター・市町村へ連絡する見守りネットワークが動く場合があります。
  • 発見後は必ず振り返るいつ、どこから出て、どう見つかったか。次の予防のために記録します。
ポイント:発見後に本人を責めない見つかった安堵から、つい強い口調になりがちです。しかし叱責は本人の不安を強め、次の外出のきっかけになります。家族にもこの点を事前に伝えておいてください。

家族に伝えておきたいこと

備えの多くは家族が実行する部分です。次の点を、リスクを感じた早い段階で伝えておいてください。

  • 行方不明は「まだ歩ける」段階で起きやすいこと
  • 警察への届出は早いほどよく、後から取り下げられること
  • 直近の写真を、いつでも出せる場所に用意しておくこと
  • 自治体の見守り登録は事前申請が必要なこと
  • 見つかったときに叱責しないこと
  • 玄関に施錠して閉じ込めるのは身体拘束にあたりうること
ポイント:家族の自責を軽くしておく行方不明が起きると、家族は「目を離した自分が悪い」と強く責めます。24時間の見守りは誰にも不可能であることを、事前に伝えておいてください。備えを一緒に整える過程そのものが、家族を支えることになります。

よくある質問(FAQ)

GPS機器の費用に介護保険は使えますか?
介護保険の福祉用具貸与の対象ではありませんが、市町村が独自に貸与・助成を行っている場合があります。地域包括支援センターや市町村に確認してください。
玄関に鍵をかけて外に出られなくするのは?
本人が自分の意思で出られない状態にすることは、身体拘束にあたる可能性があります。安全確保が必要な場合でも、他の方法を検討し、家族とも十分に話し合ってください。
何時間で警察に届け出るべきですか?
時間の基準を待つ必要はありません。所在が分からず、危険が予測される時点で届け出るのが原則です。届出後に見つかった場合は取り下げればよく、遅れることのほうがリスクです。
繰り返し行方不明になる場合、施設入所しかないですか?
選択肢のひとつではありますが、その前に日中の活動量を増やす、不安の要因を減らす、通所の回数を見直すなど、行動の背景に働きかける方法があります。医療との連携も検討してください。
本人にGPSを持たせることを嫌がる場合は?
普段から持ち歩く物(財布、鍵、杖、靴)に組み込む方法があります。無理に身につけさせようとすると拒否が強まるため、生活の中に自然に置く工夫を家族と一緒に考えてください。
まとめ
  • 行方不明は「まだ歩ける」段階の人ほど起きやすい。重度の人だけの問題ではない。
  • 本人には必ず目的がある。行き先の候補を家族から聞き取り、事前にリスト化しておく。
  • 備えは5つ。身元が分かるもの/最近の写真/見守りネットワーク登録/行き先リスト/連絡手順。
  • 自治体の制度は事前登録が前提。いなくなってからでは間に合わない。
  • 警察への届出をためらわない。時間の基準を待つ必要はなく、遅れることのほうがリスク。

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