【ケアマネの悩み】本人と家族の意向が違う時はどうする?

ケアマネジャーとして働いていると、必ずと言っていいほど直面するのが「本人と家族の意向が食い違うケース」です。
- 本人は「家で暮らしたい」と言っている
- 家族は「もう在宅は無理。施設に入ってほしい」と言う
- 本人はデイサービスを拒否
- 家族は「利用してほしい」と強く希望
このような場面で、ケアマネはどう動くべきなのでしょうか?
本記事では、ケアマネジャー向けに、本人と家族の意向が違う場合の対応方法や考え方、実践的な調整のコツについて詳しく解説します。
本人と家族の意向が違うのは“よくあること”
まず前提として押さえておきたいのは、
意向の不一致は特別なことではないという点です。
高齢者本人は、
- 住み慣れた家にいたい
- 他人に迷惑をかけたくない
- 施設に入る=人生の終わりというイメージがある
- 「まだ大丈夫」と思っている
という気持ちを持っていることが多いです。
一方で家族は、
- 仕事と介護の両立が限界
- 夜間対応が負担
- 転倒や事故が心配
- 将来的なリスクを考えている
という立場から考えています。
つまり、どちらも間違っていないのです。
立場が違うからこそ、見えている景色が違うだけなのです。
原則は「本人の意思の尊重」
介護保険制度の基本理念は
利用者の尊厳の保持と自立支援です。
ケアマネジメントの大前提は「本人主体」。
つまり、原則は以下です。
本人の意思を最優先に考える
しかし、ここで問題になるのが、
「本人の判断能力が低下している場合」や
「本人の希望通りにすると安全が確保できない場合」です。
現実は、理想通りにはいきません。
よくある具体例
ケース①:本人は在宅希望、家族は施設希望
本人:「家を離れたくない」
家族:「夜間対応が限界。仕事も辞められない」
ケース②:本人はサービス拒否、家族は利用希望
本人:「デイは行かない」
家族:「日中だけでも預かってほしい」
ケース③:本人は軽い認識、家族は危機感が強い
本人:「まだ一人で大丈夫」
家族:「何度も転倒している」
これらは、ケアマネなら誰でも経験する場面です。
ケアマネが取るべき基本姿勢
① どちらかの味方にならない
一番やってはいけないのは、
家族寄りになる、または本人寄りになりすぎることです。
ケアマネは“調整役”。
「中立」であることが信頼の土台になります。
② まずは双方の本音を丁寧に聞く
本人と家族は、実は本音を言えていないことがあります。
本人の本音例:
- 迷惑をかけていると分かっている
- 本当は不安もある
- でも家を離れたくない
家族の本音例:
- 介護疲れが限界
- 罪悪感がある
- 本当は家で見てあげたい
個別面談を行い、それぞれの思いを整理することが重要です。
意向が違うときの具体的対応ステップ
ステップ① 事実を整理する
感情論だけでなく、客観的事実を整理します。
- 転倒回数
- 夜間覚醒の頻度
- 介護者の就労状況
- 医療的リスク
事実を共有すると、話し合いが前向きになります。
ステップ② リスクを可視化する
「危ないです」ではなく、
- このままだと骨折リスクが高い
- 介護者が倒れる可能性がある
- 緊急搬送の確率が高まる
など具体的に説明します。
数字や具体例は説得力があります。
ステップ③ 選択肢を“二択にしない”
「在宅か施設か」の二択にすると対立が激化します。
代替案の例:
- ショートステイ併用
- 週1回デイから開始
- 訪問介護を増やす
- 老健を一時利用
段階的な提案が調整のカギです。
ステップ④ 第三者の意見を活用
医師、訪問看護師、リハ職など
第三者の専門職の意見は有効です。
家族よりも専門職の言葉の方が響く場合もあります。
判断能力が低下している場合
認知症が進行している場合、
本人の意思決定能力が十分でないこともあります。
この場合は、
- 本人のこれまでの価値観
- 以前の発言
- 生活歴
- 代理決定の妥当性
を総合的に判断します。
アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の視点も重要です。
ケアマネが抱えやすい葛藤
本人と家族の間に挟まれ、
- どちらを優先すべきか悩む
- 感情的に責められる
- クレームにつながる
- 自分が悪者になる
といったストレスを感じることもあります。
しかし、忘れてはいけないのは、
ケアマネは「決定者」ではなく「支援者」である
ということです。
最終決定は利用者・家族。
ケアマネはプロセスを支える役割です。
合意形成のコツ
① 小さな成功体験を作る
いきなり大きな変更をせず、
- 週1回デイから始める
- 1泊ショートを試す
- 訪問回数を増やす
成功体験を積むと受け入れやすくなります。
② 感情を否定しない
「それは間違いです」と言うと関係が悪化します。
代わりに、
- そう感じますよね
- 心配になりますよね
と共感を示すことが大切です。
③ “落としどころ”を探す
完全一致は難しいケースも多いです。
重要なのは、
- 誰もが100%満足ではない
- しかし全員が納得できる範囲を探す
という姿勢です。
それでもまとまらない場合
以下を検討します。
- 地域包括支援センターへ相談
- 主治医から説明してもらう
- 家族会議を複数回実施
- 成年後見制度の検討
一人で抱え込まないことが重要です。
ケアマネが意識すべきポイントまとめ
- 原則は本人主体
- しかし安全配慮も重要
- 中立性を保つ
- 感情と事実を分けて整理
- 段階的提案をする
- 専門職を巻き込む
- 抱え込まない
まとめ
本人と家族の意向が違うのは、ケアマネ業務の中でも特に難しい課題です。
しかし、
- 丁寧な傾聴
- 客観的事実の整理
- 段階的な提案
- 中立的な立場
これらを意識することで、合意形成の可能性は高まります。
ケアマネは板挟みになる仕事ですが、
同時に「人と人をつなぐ専門職」でもあります。
悩むことは、真剣に向き合っている証拠です。
一人で抱え込まず、チームで支えていきましょう。
















