支援困難事例の対応方法|4つの型別に糸口と連携先を解説

「何度訪問しても支援を受け入れてもらえない」「家族との関係がこじれて前に進まない」——担当のなかに1件はある、いわゆる支援困難事例。ケアマネが一人で抱え込むと、消耗だけが積み重なります。
この記事では、支援困難事例を4つの型に分けて、型ごとの対応の糸口と連携先を整理しました。
- 支援困難事例とは何か(何が「困難」なのか)
- 困難さの4つの型と、それぞれの対応の糸口
- 対応の基本となる5つのステップ
- 連携先の一覧と、相談するタイミング
- ケアマネが一人で抱え込まないための工夫
支援困難事例とは|「困難」の正体を分ける
支援困難事例に決まった定義はありませんが、現場では支援が進まない、あるいは支援者側が対応に行き詰まっている状態を指します。大切なのは、「この人は困難ケース」と人にラベルを貼らないことです。
困難さの4つの型と対応の糸口
1. 本人が支援を拒否する型
必要性は明らかなのに、本人が受け入れない状態です。背景には、他人を家に入れたくない気持ち、これまでの生活を変えたくない思い、認知機能の低下による理解の難しさなどがあります。
- 拒否の理由を決めつけず、本人の言葉で語ってもらう
- いきなり支援を入れず、まず関係づくりを目標にする
- 本人が信頼している人(親族、近隣、かかりつけ医)を探す
ごみ屋敷など生活環境が悪化している場合は、セルフネグレクトへの対応もあわせて確認してください。
2. 家族に課題がある型
家族が支援の障壁になっている、あるいは家族自身に支援が必要な状態です。8050問題、依存症、精神疾患、経済的困窮などが背景にあります。
- 世帯全体を支援の対象として捉える
- 家族の相談先(障害・生活困窮・精神保健など)につなぐ
- 虐待が疑われる場合は、早い段階で市町村に相談する(高齢者虐待防止の義務化対応)
3. 社会資源が足りない型
必要なサービスが地域にない、事業所が見つからない、経済的に使えない、といった状態です。ケアマネ個人の努力では解決できない部分があります。
- インフォーマルな資源(住民主体の活動、ボランティア、民間サービス)を探す
- 使える制度(生活保護、生活困窮者自立支援、障害福祉)を確認する
- 資源の不足は地域ケア会議で発信し、地域課題として共有する
4. 支援者側に行き詰まりがある型
関係がこじれた、担当者が疲弊している、判断に迷いが続いている状態です。これも立派な困難さで、隠す必要はありません。
- 主任ケアマネや管理者にスーパービジョンを求める
- 担当を変える・複数担当にするなど体制で対応する
- 事業所内で事例検討会を開き、視点を増やす
新人「自分の力不足かも」と感じてしまいます。
先輩困難事例は、制度や地域の課題が一人のケアマネの机に集まってきた状態なの。抱え込まずに広げるのが正しい対応よ。相談することは、力不足のサインではないわ。
支援困難事例の対応方法|基本の5ステップ
- 情報を時系列で整理するいつから、何が起きているのかを書き出し、思い込みと事実を分けます。
- 困難さの所在を分解する本人・家族・資源・支援者のどこに困難さがあるかを整理します。
- 当面の目標を小さく設定する「解決」ではなく「玄関先で5分話せる」など、達成できる目標に下げます。
- 関係機関と役割を分担する誰が何を担うかを明確にし、ケアマネ一人の負担にしません。
- 記録し、振り返る対応の経過と根拠を残し、定期的に方針を見直します。
連携先と相談のタイミング
| 状況 | 主な連携先 |
|---|---|
| 虐待が疑われる | 市町村(高齢者虐待担当)、地域包括支援センター |
| 判断能力の低下、金銭管理が難しい | 地域包括支援センター、社会福祉協議会、家庭裁判所(成年後見) |
| 経済的に困窮している | 福祉事務所、生活困窮者自立相談支援機関 |
| 同居家族に障害・精神疾患がある | 障害福祉の相談支援事業所、保健所、精神保健福祉センター |
| 医療につながらない | かかりつけ医、訪問看護、地域の在宅医療の相談窓口 |
| 地域の資源が不足している | 地域ケア会議、生活支援コーディネーター |
抱え込まないための工夫
- 困難事例は「事業所の案件」として共有し、担当者個人の問題にしない
- 月1回など定期的に事例を見直す場を作る
- できたこと(小さな変化)も記録し、進んでいる実感を持つ
- 支援の目標を、支援者が納得できる水準に調整する
困難事例でつまずきやすい3つの誤解
| 誤解 | 実際は |
|---|---|
| 「説得できれば解決する」 | 説得は拒否を強めることが多い。まず理由を理解し、本人が選べる形にする |
| 「サービスを入れれば落ち着く」 | サービスは手段の一つ。関係づくりや制度の利用、家族支援が先に必要なこともある |
| 「担当者が我慢すればいい」 | 抱え込みは支援の質を下げる。事業所と地域で分担するのが本来の姿 |
困難事例では、「今日は何を目指すのか」を一つだけ決めて訪問すると、消耗しにくくなります。玄関先で話せた、薬の袋を見せてもらえた——そうした小さな変化も、支援が進んだ証拠として記録に残しましょう。
記録に残しておきたい4つのこと
- 事実:日時、場所、誰が何を言ったか、何を観察したか
- 判断:その事実から何を考え、どう対応することにしたか
- 連携:どの機関に、いつ、何を相談したか
- 本人・家族の意向:本人の言葉をそのまま残す
困難事例の記録は、後から関係機関や行政と共有する場面が出てきます。読む人が経過を追えるように、時系列で簡潔に残しておくことが、自分自身を守ることにもつながります。
よくある質問(FAQ)
支援困難事例に明確な定義はありますか?
本人が支援を拒否する場合、どこまで関わればよいですか?
担当を外してもらうことはできますか?
地域ケア会議には、どんな事例を出せばよいですか?
記録はどこまで詳しく書くべきですか?
- 困難なのは「人」ではなく「状況」。本人・家族・資源・支援者のどこに困難さがあるかを分ける
- 拒否には関係づくり、家族の課題には世帯支援、資源不足には地域への発信で対応する
- 支援者側の行き詰まりも困難さの一つ。スーパービジョンや体制の見直しで対応する
- 目標は小さく設定し、関係機関と役割を分担する
- 生命・身体に危険がある場合は、関係づくりより通報・相談を優先する














