高額介護サービス費制度とは?わかりやすく詳しく解説

介護保険サービスを利用する際、自己負担は原則1割から3割ですが、利用するサービスが増えると月々の支払いが高額になる場合があります。
特に要介護度が高い方や施設に入所している方は、利用者負担が数万円から数十万円になることも珍しくありません。
そんなときに家計を助けてくれるのが「高額介護サービス費制度」です。この制度を正しく理解しておくことで、払い過ぎを防ぎ、安心して介護サービスを利用できます。
この記事では、高額介護サービス費制度の仕組み、利用できる条件、自己負担の上限額、申請方法、注意点について詳しく解説します。
高額介護サービス費制度とは?
制度の概要
高額介護サービス費制度とは、介護保険サービスの利用者負担が一定額を超えた場合に、その超過分が払い戻される仕組みです。医療保険における「高額療養費制度」と似た位置づけで、介護が長期化しても安心してサービスを利用できるように設けられています。
対象となる費用
- 介護保険サービスの自己負担分(1割〜3割)
- 在宅サービスや施設サービスの利用料
※食費や居住費、オムツ代、日常生活費などは対象外です。
高額介護サービス費の自己負担上限額(月額)
高額介護サービス費では、所得区分ごとに自己負担の上限額が設定されています。超えた分は払い戻しを受けられるため、利用者負担が軽減されます。
所得区分別の上限額(1か月あたり)
- 生活保護受給者・住民税非課税世帯(低所得者I)
自己負担上限:15,000円 - 住民税非課税世帯で年金収入80万円以下(低所得者II)
自己負担上限:24,600円 - 一般(多くの高齢者が該当)
自己負担上限:44,400円 - 現役並み所得者(課税所得145万円以上、年収383万円以上の人)
自己負担上限:44,400円(世帯合算で一定条件あり) - 高所得者(3割負担該当者)
自己負担上限:140,100円
このように、世帯の所得や課税状況に応じて上限額が変わる仕組みです。
高額介護サービス費の計算方法と仕組み
例1:一般所得の人
- 要介護3の方が1か月に15万円のサービスを利用
- 自己負担割合1割なので15,000円を支払う
- 44,400円の上限を超えないため、そのまま支払う
例2:高額利用になった場合
- 要介護5の方が1か月に50万円のサービスを利用
- 自己負担1割なので50,000円支払う
- 上限44,400円を超えるため、差額の5,600円が払い戻し対象
世帯合算が可能
高額介護サービス費は同一世帯で合算可能です。
例えば、夫婦で介護サービスを利用している場合、それぞれの自己負担を合算して上限を超えた分が払い戻されます。
例:
- 夫:自己負担 30,000円
- 妻:自己負担 25,000円
- 合計 55,000円 → 上限44,400円を超えるため、10,600円が払い戻し
高額介護サービス費の申請方法
手続きの流れ
- サービスを利用し、自己負担を支払う
- 限度額を超えた場合、市区町村から「高額介護サービス費のお知らせ」が届く
- 必要書類を提出して申請
- 審査後、支給決定され、口座に払い戻し
注意点
- 多くの自治体では「初回のみ申請」が必要で、2回目以降は自動払い戻し
- 申請書類は自治体の介護保険課などに提出
- 振込までに数か月かかることもある
高額医療・高額介護合算制度との違い
高額介護サービス費とは別に、「高額医療・高額介護合算制度」も存在します。

高額医療・高額介護合算制度とは?
- 1年間(8月〜翌年7月)に支払った医療費と介護費を合算し、自己負担が上限を超えた場合に払い戻しされる制度
- 医療と介護を両方利用している世帯に有効
違いのポイント
- 高額介護サービス費 → 月単位で判定
- 高額医療・高額介護合算 → 年単位で判定
両方を上手に利用することで、負担をさらに軽減できます。
高額介護サービス費制度のメリットと注意点
メリット
- 高額な介護サービス利用でも安心
- 世帯合算ができるため、夫婦で介護を受けている家庭に有利
- 所得区分に応じて上限が決まるので公平性がある
注意点
- 食費や居住費は対象外
- 申請を忘れると払い戻しを受けられない場合がある
- 高額介護サービス費と高額医療・高額介護合算制度を混同しやすい
ケアマネジャーが押さえておくべき視点
- 利用者や家族への説明
「食費や居住費は対象外」であることを明確に伝える。 - 負担感が大きい世帯に制度利用を提案
介護サービス利用を控えてしまうケースを防ぐ。 - 医療との連携
介護と医療の両方で費用がかかっている場合、高額医療・高額介護合算制度を案内。
よくある質問(Q&A)
Q:申請しなくても自動的に払い戻しされますか?
A:初回は申請が必要ですが、2回目以降は自動払い戻しになる自治体が多いです。
Q:施設サービスでも使えますか?
A:はい。ただし、食費・居住費などは対象外です。
Q:夫婦で別々の自治体に住んでいる場合は合算できますか?
A:合算できるのは同一世帯(同一住所)の場合に限られます。
まとめ
高額介護サービス費制度とは、介護保険の自己負担が一定額を超えた場合に、その超過分を払い戻す仕組みです。
- 所得区分ごとに自己負担の上限額が決まっている
- 世帯内での合算が可能
- 月ごとに判定され、申請すれば払い戻しが受けられる
- 食費や居住費は対象外なので注意が必要
介護サービスの自己負担が重くても、この制度を利用すれば安心して介護を継続できます。ケアマネジャーや家族は制度を正しく理解し、利用者が不安なく生活できるようにサポートしていきましょう。