ショートステイに行きたがらないときの理由と対応方法を徹底解説

介護をしている家族にとって、ショートステイ(短期入所生活介護)はとても心強いサービスです。
数日〜数週間、介護施設で生活してもらうことで、介護者の休養や冠婚葬祭、旅行などの用事にも対応でき、在宅介護を無理なく続けるために欠かせない仕組みです。
しかし、いざ利用しようとすると「本人が行きたがらない」「施設に預けられるみたいで嫌だ」と拒否されてしまうことが多いのも現実です。
本人の拒否感が強いと家族も気を使ってしまい、結局利用できずに介護疲れをためてしまうケースも少なくありません。
この記事では「ショートステイに行きたがらない」というテーマで、本人がなぜ嫌がるのか、その心理や理由を深掘りし、家族やケアマネができる具体的な対応方法、効果的な声かけ例、避けるべきNG対応まで詳しく解説します。
ショートステイとは?在宅介護を支える重要な仕組み
ショートステイは、介護保険サービスの一つで、要介護認定を受けた高齢者が短期間だけ施設に入所し、生活援助や介護を受けられる仕組みです。利用日数は1泊2日から数週間まで幅広く、施設によっては医療的ケアやリハビリのサポートも受けられます。
家族にとっては、冠婚葬祭や出張などで介護を一時的に担えないときや、介護疲れを回復するための「レスパイトケア(休養のための介護)」として活用できます。本人にとっても、安全な環境で介護を受けながら過ごせるため、生活リズムの安定や交流の機会が得られるメリットがあります。
しかし、どんなに有意義なサービスであっても「知らない場所で過ごす」「家を離れる」といった不安が先に立ち、「行きたくない」と拒否につながるのです。
ショートステイに行きたがらない主な理由
環境の変化への強い不安
高齢者にとって、自宅は「自分のペースで安心して暮らせる唯一の場所」です。ショートステイでは見知らぬ部屋、ベッド、浴室を使う必要があり、生活リズムも変化します。慣れない環境は強いストレスになりやすく、「行きたくない」と感じる原因になります。特に認知症のある方は環境変化に敏感で、混乱や不安を増幅させるケースも少なくありません。
自宅への強い愛着と「居場所を失う」感覚
「やっぱり家が一番」「住み慣れた家から離れたくない」という気持ちは、多くの高齢者に共通しています。短期間とはいえ「施設に預けられる」ことを「家を追い出される」と受け止めてしまい、心理的な抵抗が強くなってしまいます。
他人との共同生活が苦手
ショートステイでは複数の利用者と同じ空間で過ごすことが多く、人付き合いが苦手な方にとっては気疲れの原因となります。「気を使うのが嫌」「知らない人と一緒は落ち着かない」といった理由で拒否する方も多いです。
費用への不安
介護保険を使っても、宿泊費・食費・日常生活費は自己負担が必要です。経済的に余裕がない方は「家計の負担になるから使いたくない」と考え、利用を拒むケースがあります。
「施設に入る=見捨てられる」という思い込み
「施設に入れられるのは子どもに見捨てられた証拠」「もう人生の終わりだ」と誤解している人もいます。過去のイメージや世代間の価値観から「施設=最期の場所」と捉えてしまうことがあり、ショートステイにも抵抗を示すのです。
行きたがらないときの対応方法
不安を共感して受け止める
「嫌なら行かなくていいでしょ」と突き放すのではなく、「そうだよね、初めてだと不安になるよね」と共感することが大切です。本人の気持ちを認めることで、安心感が生まれ、説得の土台ができます。
メリットを本人目線で具体的に伝える
「リハビリができるからいいよ」よりも「行けば足腰の運動ができて転びにくくなるよ」「美味しい食事を作ってもらえるよ」など、本人にとってプラスになる点を具体的に伝えます。ぼんやりした説明では納得感が薄くなるので注意が必要です。
短期間・お試し利用から始める
最初から1週間の利用ではなく、1泊2日など短期間からスタートすると受け入れやすくなります。「一度だけ試してみよう」という声かけは効果的です。
家族の安心を理由にする
「あなたが行ってくれると、私も少し休めるの」
「私が病院に行く間だけお願いしたいの」
と伝えると、「家族のためなら」と納得してくれるケースがあります。
施設スタッフと協力する
送迎時や事前の連絡でスタッフから「楽しみにしています」と声をかけてもらうと、安心して出発しやすくなります。家族だけで抱え込まず、施設と連携することがポイントです。
声かけの工夫【状況別の例】
環境が不安な人への声かけ
「行ったら個室でゆっくり休めるから安心だよ」
「初めはスタッフさんが付き添ってくれるから大丈夫」
家を離れたくない人への声かけ
「数日したらすぐ帰れるからね」
「家のことは任せて、ちゃんと守っておくから安心して」
他人との関わりが苦手な人への声かけ
「一人で過ごす時間もあるから無理に話さなくて大丈夫」
費用を気にする人への声かけ
「介護保険を使うから思っているより負担は少ないよ」
行きたがらないときに避けたいNG対応
強引に連れて行く
嫌がる本人を無理に送迎してしまうと、「次は絶対に行かない」という強い拒否につながります。
否定的な言葉を使う
「もう家では無理」「自分では何もできないでしょ」といった言葉は、プライドを傷つけるだけで逆効果です。
家族の都合だけを押し付ける
「私が楽になるから行って」と伝えると、「迷惑をかけている」と思い込ませてしまいます。あくまで「本人にとってのメリット」を中心に伝えることが大切です。
家族ができる工夫
施設を事前に見学する
パンフレットや説明だけではイメージしにくいため、実際に施設を見学して雰囲気を確認すると安心感が高まります。
定期的に利用して習慣化する
不定期に利用するよりも、定期的にショートステイを利用する方が本人も「今日はショートの日」と自然に受け入れやすくなります。
小さな成功体験を積む
「行ったら楽しかった」「ご飯が美味しかった」といった成功体験を積み重ねると、次回の利用につながります。
まとめ
ショートステイに行きたがらない理由は、環境の変化への不安、自宅への愛着、共同生活への抵抗、費用面の心配、「施設に預けられる」という思い込みなどさまざまです。
対応の基本は、
- 本人の気持ちを共感して受け止める
- 本人にとってのメリットを具体的に伝える
- 短期間から始める
- 家族の安心を理由にする
- 施設スタッフと連携する
強引に連れて行くのではなく、少しずつ安心感を積み重ねて慣れてもらうことが大切です。ショートステイは本人と家族双方の生活を守るサービスです。工夫しながら活用し、在宅介護を長く続けられる環境を整えていきましょう。