療養通所介護とは?わかりやすく解説

介護保険サービスのひとつに「通所介護(デイサービス)」があります。一般的なデイサービスは、食事や入浴、機能訓練などを日帰りで利用できるサービスですが、利用者の中には医療的なケアや高度な介護が必要な方もいます。
そこで登場するのが「療養通所介護」です。療養通所介護は、医療ニーズが高い要介護者に対して、医療と介護を一体的に提供する通所サービスです。しかし「どんな人が対象なのか」「通常のデイサービスと何が違うのか」「費用はいくらかかるのか」と疑問を持つ方も多いでしょう。
本記事では、療養通所介護の概要、対象者、サービス内容、通常の通所介護との違い、利用までの流れ、費用、メリット・デメリットをわかりやすく解説します。
療養通所介護とは?
定義
療養通所介護とは、介護保険サービスのひとつで、常に医療的管理が必要な重度要介護者を対象に、通所形式で医療・看護・介護を提供するサービスです。
一般のデイサービスよりも医療機能を重視しており、医師や看護師が常駐しているのが特徴です。
目的
- 在宅で暮らす重度要介護者が安心して生活を続けられるよう支援
- 医療的ケアを受けながらリハビリや日常生活支援を提供
- 家族の介護負担を軽減し、在宅療養を可能にする
対象となる利用者
療養通所介護を利用できるのは、以下の条件を満たす方です。
- 要介護度が3〜5の高齢者(重度者が中心)
- 常に医療的管理が必要な方
- 在宅での生活を基本とし、日帰り通所が可能な方
利用対象の具体例
- 人工呼吸器や気管切開で管理が必要な方
- 経管栄養(胃ろう・経鼻栄養)を行っている方
- 吸引、在宅酸素療法が必要な方
- 褥瘡(床ずれ)の治療や処置が必要な方
- 進行性の難病や重度の障害を持つ方
サービス内容
療養通所介護では、一般的なデイサービスに加えて、以下のような医療的ケアを受けられます。
1. 医療的ケア
- バイタルサインの測定(血圧・体温・脈拍など)
- 点滴・注射などの医療処置(医師の指示に基づく)
- 経管栄養の管理
- 吸引・在宅酸素の管理
- 褥瘡処置や創傷ケア
2. 日常生活支援
- 食事介助・経口摂取の見守り
- 入浴介助(特殊浴槽を備えていることが多い)
- 排泄介助
- 移動や着替えの介助
3. 機能訓練・リハビリ
- 理学療法士や作業療法士による機能訓練
- 呼吸リハビリや嚥下訓練
- 残存機能の維持を目的とした個別プログラム
4. 家族支援
- 在宅療養に関する指導
- 介護方法の相談
- 医療・介護連携の調整
通常の通所介護との違い
項目 | 通所介護(デイサービス) | 療養通所介護 |
---|---|---|
利用対象 | 要支援〜要介護5まで幅広く利用可 | 医療的ケアが必要な重度要介護者 |
医療体制 | 看護師は配置義務ありだが簡易対応中心 | 医師・看護師が常駐し高度な医療対応可能 |
サービス内容 | 食事・入浴・機能訓練・レクリエーション | 医療的処置+リハビリ+日常生活支援 |
雰囲気 | レクリエーション中心の明るい場 | 医療色が強く、落ち着いた環境 |
利用までの流れ
- ケアマネジャーに相談
本人や家族の状態を伝え、療養通所介護が適切か確認。 - 医師の意見書
医療的ケアが必要であることを示す診断書・意見書が必要。 - 事業所の見学・契約
設備(特殊浴槽や医療機器)が整っているか確認。 - 利用開始
週1回から数回まで、必要に応じて調整。
利用費用の目安
療養通所介護の費用は、介護保険サービス費用+食費などの実費がかかります。
基本料金(1割負担の例)
- 要介護3:約1,200円/回
- 要介護5:約1,800円/回
別途かかる費用
- 食費:1食500〜700円程度
- 入浴加算:50〜100円
- 医療連携加算など
月額合計:約3万〜6万円程度(利用頻度による)
療養通所介護のメリット
- 高度な医療的ケアが受けられる
医師や看護師が常駐し、安心して通所できる。 - 在宅生活を継続できる
医療的に重度でも、入院や施設入所を避けて在宅療養が可能。 - 家族の介護負担が軽減
数時間でも安心して任せられるため、介護者の休養時間が確保できる。 - 多職種連携による支援
医師・看護師・リハ職・介護職がチームで支える。
デメリット・注意点
- 対象者が限定される
要介護3以上で医療的ケアが必要な人に限られる。 - 医療色が強くレクリエーションは少なめ
一般のデイサービスのような娯楽性は低い。 - 事業所数が少ない
地域によっては療養通所介護の事業所が限られ、利用しづらい。 - 費用がやや高め
通常のデイサービスより自己負担額が高くなる傾向がある。
ケアマネジャーの視点
- 本人の医療ニーズを正確に把握し、通常の通所介護か療養通所介護かを判断することが重要。
- 医師との連携が必須であり、意見書の取得を早めに進める。
- 家族に対しては、費用やサービス内容を丁寧に説明し、安心して利用できるようにする。
よくある質問(Q&A)
Q:療養通所介護は要支援の人も使えますか?
A:いいえ。要介護3以上の人が基本的な対象です。
Q:医師は常勤していますか?
A:事業所によりますが、嘱託医や提携医療機関との連携で医師が関与しています。看護師は常勤が基本です。
Q:費用は高いですか?
A:一般のデイサービスより高めですが、医療的ケアが含まれているため相応の料金です。
まとめ
療養通所介護とは、医療的管理が必要な重度要介護者に対し、医療・看護・介護を一体的に提供する通所サービスです。
- 対象は要介護3以上で医療的ケアが必要な人
- 医師・看護師が常駐し、点滴・吸引・経管栄養など高度な処置も対応可能
- 在宅生活の継続と家族の介護負担軽減に大きく役立つ
- ただし、利用者は限定され、費用もやや高め
重度の医療ニーズがある方にとって、療養通所介護は「入院や施設入所ではなく、自宅で暮らす」ための大切な選択肢です。利用を検討する際は、ケアマネジャーや医師に相談し、本人の生活に合った支援を選びましょう。