介護記録の電子化|紙から記録システムへ移行する手順と定着のコツ

「手書きの記録を、あとでパソコンに打ち直している」「記録用紙を探すのに時間がかかる」。紙中心の介護記録は、書く・転記する・探す・保管するのそれぞれに手間がかかります。
結論からいうと、介護記録の電子化は、記録・転記・集計の時間を減らし、職員間の情報共有を速くできる取り組みです。成功させるには、いきなり全部を変えず、目的を決めて小さく始め、職員が使いこなせるよう段階的に移行することが大切です。この記事では、介護記録を電子化するメリットと課題、紙から記録システムへ移行する手順、定着させるコツをまとめました。
- 介護記録を電子化するメリットと課題
- 記録システムの種類と選び方
- 紙から記録システムへ移行する手順
- 電子化を職員に定着させるコツ
介護記録を電子化するメリット
| メリット | 具体的な効果 |
|---|---|
| 転記がなくなる | その場でタブレットに入力すれば、手書きのメモをパソコンに打ち直す必要がない |
| 情報共有が速くなる | 入力した内容がすぐに全員に共有され、申し送りの時間が短くなる |
| 集計が自動になる | 食事量・水分量・排泄・バイタルの記録が自動でグラフや一覧になる |
| 探す時間が減る | 利用者名や日付で検索でき、過去の記録をすぐに見られる |
| 請求や加算との連動 | サービスの実績が請求データや、LIFEへの提出データに反映される |
| 保管場所がいらない | 記録用紙のファイルや保管庫が不要になる |
厚生労働省も、介護現場の生産性向上の取り組みとして、ICTを活用した記録や情報共有を推進しています。介護記録の電子化は、その中心となる取り組みです。
新人転記の手間がなくなるだけでも、かなり違いますね。
先輩そうよ。「同じことを2回書く」をなくすのが、電子化の一番わかりやすい効果ね。その分の時間を、利用者さんと関わる時間に回せるわ。
介護記録の電子化の課題
- 導入費用:ソフトの利用料、タブレットや通信環境の整備に費用がかかる
- 職員の慣れ:機械が苦手な職員にとっては、最初は手書きより時間がかかることがある
- 入力の手間:入力画面が使いにくいと、かえって記録の負担が増える
- トラブルへの備え:停電や通信障害、端末の故障のときにどう記録するかを決めておく必要がある
- 情報セキュリティ:端末の紛失やパスワードの管理など、個人情報を守る対策が必要
電子化は「手段」です。何のために電子化するのか(転記をなくしたい、情報共有を速くしたいなど)をはっきりさせないまま導入すると、使われないシステムになりがちです。
介護記録システムの種類と選び方
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 介護ソフト一体型 | 請求ソフトと記録が一つになっている。実績から請求までの流れがつながる |
| 記録特化型 | タブレットやスマートフォンでの入力に特化し、操作が簡単なものが多い |
| 音声入力型 | 話しかけるだけで記録できる。手がふさがる場面や、入力が苦手な職員に向く |
| センサー連携型 | 見守りセンサーやバイタル測定機器のデータが自動で記録に反映される |
選ぶときは、現場の職員が実際に試して「これなら使える」と感じるかを最も大切にしましょう。ボタンの大きさ、文字の見やすさ、よく使う記録が何回のタップで終わるかを確認します。定型文や選択式の入力ができると、記録の時間を大きく減らせます。
紙から介護記録システムへ移行する手順
- 今の記録を洗い出すどんな記録を、誰が、いつ、何に書いているかを一覧にします。同じ内容を複数の用紙に書いている「重複」を見つけます。
- 目的と範囲を決める「転記をなくす」「申し送りの時間を半分にする」など目的を決め、最初に電子化する記録を選びます。
- システムを選び、試す複数のシステムを現場の職員と一緒に試し、使いやすいものを選びます。
- 環境を整えるタブレットの台数、Wi-Fiが届く範囲、充電場所、端末の保管方法を決めます。
- 小さく始める一つのフロアや一部の記録から始め、問題点を直しながら広げていきます。
- 紙と並行して確認する最初の1〜2か月は必要に応じて紙も残し、記録漏れがないことを確認してから紙をやめます。
- 振り返る記録にかかる時間や残業時間などを、導入前と比べて効果を確かめます。
新人一気に全部変えないほうがいいんですね。
先輩そうなの。最初の成功体験が、ほかの職員を巻き込む力になるわ。うまくいった部署の職員に、ほかの部署で教える役をお願いするのも効果的よ。
電子化を職員に定着させるコツ
- 推進役を決める:各部署に一人、操作に詳しい担当者を置き、困ったときにすぐ聞ける体制をつくる
- 操作の研修を短く何度も:一度の長い研修より、10〜15分の練習を何回か行うほうが身につきやすい
- 入力のルールを決める:何をどこまで書くか、定型文の使い方をそろえる
- 苦手な職員を置き去りにしない:音声入力や選択式の入力を活用し、ペアで操作するなど工夫する
- 効果を見える化する:「申し送りが10分短くなった」など、変化を職員に伝える
- トラブル時の手順を決める:通信障害のときは紙の予備用紙に書き、復旧後に入力するなど、手順を決めておく
情報セキュリティのルール
電子化すると、たくさんの個人情報が端末の中に入ります。次のようなルールを決めておきましょう。
| 項目 | ルールの例 |
|---|---|
| ログイン | 職員ごとにIDを分け、パスワードを共有しない。退職者のIDはすぐに止める |
| 端末の管理 | 端末に番号をつけ、使う人と保管場所を決める。持ち出しのルールを決める |
| 画面ののぞき見 | 利用者や家族の前で、ほかの人の記録が見える画面を開かない |
| 私物の端末 | 個人のスマートフォンに利用者の情報を保存しない |
| 紛失したとき | すぐに管理者へ報告し、遠隔でのロックやデータ消去を行う |
便利さとセキュリティは両立させることが大切です。厚生労働省のガイドラインも参考に、事業所の実情に合ったルールをつくりましょう。
記録の質も見直すチャンス
電子化をきっかけに、記録の書き方そのものを見直す事業所も多いです。主観ではなく観察した事実を書く、必要な項目をそろえるといった基本を、入力画面の項目設計に反映させると、記録の質も上がります。
よくある質問
介護記録を電子で保存しても法的に問題ありませんか?
導入に使える補助金はありますか?
高齢の職員が多くても電子化できますか?
紙の記録はいつ処分できますか?
- 介護記録の電子化で、転記・集計・探す時間が減り、情報共有が速くなる
- 費用・職員の慣れ・トラブル対応・セキュリティが課題
- 目的を決め、現場の職員が使いやすいシステムを選ぶ
- 一部の部署や記録から小さく始め、並行期間を経て紙をやめる
- 推進役の配置、短い研修のくり返し、効果の見える化で定着させる













