介護老人福祉施設(特養)とは?わかりやすく解説

介護保険制度の中で「特養(特別養護老人ホーム)」という言葉を耳にすることは多いと思います。
正式名称は介護老人福祉施設で、介護が常に必要な高齢者が入所して生活全般の支援を受けられる施設です。
要介護度が重く、自宅での生活が難しい方の大きな支えとなっています。
しかし「誰が入れるの?」「費用はどのくらい?」「メリットやデメリットは?」と疑問に思う方も少なくありません。
この記事では、特養のサービス内容や対象者、利用料金、入所までの流れをわかりやすく解説します。
介護老人福祉施設(特養)とは?
概要
介護老人福祉施設(特養)は、介護保険制度に基づく介護施設のひとつです。常に介護が必要で自宅生活が困難な高齢者が入所し、食事・入浴・排泄などの日常生活支援、機能訓練、健康管理を受けられます。医師や看護師による健康チェックも行われるため、安心して長期的に暮らせる施設です。
施設は公的な社会福祉法人や自治体、民間法人が運営しており、入所費用は比較的低額に抑えられている点も特徴です。
サービス内容
生活全般の介護
食事、入浴、排泄、着替えなど、日常生活に必要な介護を職員が提供します。
機能訓練
リハビリスタッフや介護職員が、心身機能の維持・改善を目的に軽度の機能訓練を行います。
健康管理
看護師による体調チェックや服薬管理、医師の定期的な診察が受けられます。
レクリエーション・交流
季節行事や趣味活動、地域交流などが行われ、生活に張り合いを持てます。
入所できる対象者
- 原則として 要介護3以上 の認定を受けた人
- 常に介護が必要で、自宅での生活が難しい人
- 特例として、要介護1・2でも「家族の介護力がない」「認知症による生活困難」など特別な事情があれば入所可能
入所は原則として長期利用が前提であり、短期利用の場合は「ショートステイ(短期入所生活介護)」を利用します。
利用料金
自己負担の仕組み
介護保険が適用されるため、介護サービス費の1〜3割が自己負担です。これに加え、居住費や食費、日常生活費が必要となります。
自己負担額の目安(1割負担の場合)
- 介護サービス費:約25,000〜30,000円/月(要介護度による)
- 居住費:20,000〜80,000円/月(部屋のタイプによる)
- 食費:40,000〜50,000円/月
- 日常生活費(おむつ代、理美容代など):数千円〜
合計で 月額7万〜15万円程度 が目安です。低所得者には食費・居住費の補足給付(負担軽減制度)が用意されています。
特養のメリット
1. 介護が手厚く安心
24時間体制で介護職員や看護師が対応してくれるため、常に介護が必要な方でも安心して生活できます。
2. 費用が比較的安い
民間の有料老人ホームに比べ、自己負担が抑えられており、長期利用しやすい点が魅力です。
3. 長期入所が可能
特養は原則として「終の棲家」として利用できるため、退所を求められることが少なく、安定した暮らしができます。
4. 医療との連携
医師や看護師が常勤・非常勤で配置されており、持病や体調管理にも対応できます。
特養のデメリット・注意点
1. 入所待機者が多い
特養は人気が高く、特に都市部では数百人単位の待機者がいるケースもあります。入所までに時間がかかることがあるため、早めの申込みが必要です。
2. 医療行為は限定的
看護師は配置されていますが、病院のような高度医療は行えません。点滴や胃ろう、在宅酸素など一部対応できる場合もありますが、状態によっては医療施設の利用が必要です。
3. 個室希望は費用が高い
4人部屋の多床室に比べ、個室は居住費が高額になります。
4. 地域外利用が難しい
特養は地域密着型ではありませんが、居住地によって優先度が変わる場合があります。
入所までの流れ
- 要介護認定を受ける
市区町村に介護保険の申請を行い、要介護3以上と認定されることが原則。 - 特養へ申し込み
希望する特養に直接申込書を提出。複数の施設に申し込むことも可能。 - 面談・調査
施設職員が本人や家族と面談し、介護度や生活状況を確認。 - 入所判定会議
施設内で優先度を判定し、入所順を決定。緊急性が高い場合(家族が介護困難、独居など)は優先されることもある。 - 入所決定・契約
空きが出たら契約を結び、入所開始となります。
他施設との違い
- 介護老人保健施設(老健):リハビリ中心で在宅復帰を目指す。入所期間は数か月〜1年程度。
- 有料老人ホーム:運営法人により内容や料金が大きく異なる。費用は高め。
- 介護医療院:医療と介護を長期的に受けられる施設。医療依存度が高い人向け。
特養は「長期的に安心して暮らしたい人」に最も適した施設です。
まとめ
介護老人福祉施設(特養)は、常に介護が必要な高齢者が安心して暮らせる長期入所施設です。費用が比較的安く、介護や健康管理を24時間体制で受けられる一方、待機者が多いことや医療対応が限定的といった課題もあります。
入所を希望する場合は、早めに申し込みを行い、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談しながら、他施設との違いも踏まえて検討することが大切です。
