介護保険制度では、同じサービス内容であっても、地域によって介護報酬の金額が異なることをご存じでしょうか?
それを決定する要素が「地域区分」です。
特にケアマネジャーや介護事業所の関係者にとっては、報酬請求や事業所経営に直結する重要な要素です。
本記事では、介護保険における地域区分の基本的な仕組みや設定の理由、地域区分による単位数の違い、注意すべき点について、分かりやすく解説します。
制度理解を深め、実務に活かすための参考にしてください。
地域区分とは何か?制度の基本を押さえよう
地域ごとの物価差を反映した介護報酬の調整制度
介護保険制度では、日本全国どこでも同じサービスが提供されることを前提としていますが、地域によって物価や人件費に差があります。そこで導入されているのが「地域区分(地域単価)」です。これは、都道府県や市区町村ごとに設定された指数(地域加算率)で、介護報酬の単価を調整する仕組みです。
例えば、都市部では人件費が高いため、報酬単価が高く設定され、地方では比較的低い水準に調整されることがあります。これにより、全国どの地域でもサービス提供者が適切な報酬を受け取れるように制度が設計されています。
地域区分はどうやって決まる?設定の仕組みを解説
厚生労働省が物価や人件費に基づいて決定
地域区分は、厚生労働省が「地域別の賃金水準」「物価水準」「都市化の状況」などの指標をもとに定めています。
全国を複数の区分(1級地〜7級地など)に分け、それぞれに「地域区分指数(乗率)」が設定されています。
地域区分 | 地域区分指数(例) |
---|---|
1級地 | 1.20(報酬20%加算) |
3級地 | 1.10(報酬10%加算) |
5級地 | 1.00(報酬基準) |
7級地 | 0.90(報酬10%減額) |
※実際の区分数や指数は介護報酬改定ごとに見直される場合があります
このように、地域の特性を踏まえた調整が行われており、自治体ごとに適用される指数が異なります。
地域区分が実務に与える影響とは?
介護報酬(単位)に直接反映される
地域区分は、介護報酬の算定に大きく影響します。たとえば、あるサービスの報酬が「500単位」と設定されていても、地域区分が「1.10」の地域であれば「550単位」として請求可能です。
実際の計算式:
報酬単位 × 地域区分指数 = 請求単位数
例)500単位 × 1.10 = 550単位
つまり、同じ内容のサービスを提供しても、地域によって収入に差が出ることになります。
ケアマネにとっても請求時に重要な要素
ケアマネジャーは、介護給付の給付管理やケアプラン作成時に報酬単位を計算する必要があります。地域区分を理解していないと、給付管理表や国保連請求でミスが起こる可能性があります。
特に注意したいのが「利用者と事業所の地域区分が異なる場合」です。利用者の住む地域と、サービス提供事業所の所在地が異なると、それぞれの区分が影響し、単位計算が複雑になるケースもあります。
地域区分を確認するには?便利な情報源を紹介


市区町村別の地域区分は「厚労省資料」や「都道府県通知」で確認
地域区分は、厚生労働省が発行する「介護報酬の地域区分一覧」で確認できます。また、都道府県や市町村の介護保険課が出している「サービスコード表」「介護報酬単価表」にも記載があります。
確認手段の例:
- 厚労省の公式ホームページ(報酬改定時に更新される)
- 各自治体の介護保険担当部署
- サービス提供事業所向けの説明会資料
介護報酬の改定時期(3年に1回)には、地域区分の変更があることもあるため、情報をこまめにチェックすることが大切です。
地域区分を意識した運営・支援の工夫とは?
1. 事業所側は経営戦略の一環として考える
地域区分が高いエリアでは、同じサービス提供でも収益性が高くなります。そのため、開設エリアの選定や人員配置、加算取得の戦略を立てる上でも地域区分は重要な指標となります。
また、複数事業所を運営している法人では、区分差による収入のバランスにも注意が必要です。
2. ケアマネは地域ごとの情報をしっかり把握する
ケアマネとしては、自分の事業所だけでなく、管轄エリア内の区分差も理解しておくと、他事業所との連携や加算算定時の調整がスムーズになります。
例:
- 同じ市でも合併前の地域で区分が異なることがある
- 山間部や離島では特殊な区分設定がされていることもある
地域ごとの事情を把握することで、より的確なサービス調整が可能になります。
まとめ
介護保険における「地域区分」とは、地域ごとの物価や人件費の違いを考慮して、介護報酬に調整を加える制度です。
設定された指数(地域区分指数)に応じて、サービスごとの単位数が加減算されるため、事業所の運営やケアマネジメント業務に大きな影響を与えます。
区分は厚生労働省が定め、市区町村ごとに異なるため、常に最新の情報を確認することが重要です。
制度を正しく理解することで、請求ミスを防ぎ、より的確なケアマネジメントにつなげていきましょう。