親の介護は誰がする?兄弟・嫁の義務と分担の決め方

「親の介護は、結局だれがやるのか」——同居している人、近くに住む人、長男、長女、そして「嫁」。誰も決めないまま、動ける人が抱え込む形になりがちです。
この記事では、法律上の義務は誰にあるのか、実際にどう分担すればよいのかを整理しました。感情論で決めると、必ず不満が残ります。
- 法律で介護の義務があるのは誰か
- 子の配偶者(嫁)に義務はあるのか
- 義務の中身は「身の回りの世話」なのか
- 兄弟での分担の決め方
- 介護した人が報われるための仕組み
親の介護は誰がするのか|法律上の義務がある人
民法では、直系血族と兄弟姉妹は互いに扶養する義務があると定められています。親から見れば、子はすべて同じ立場です。
| 続柄 | 扶養の義務 |
|---|---|
| 子(長男・次男・長女・次女) | あり。生まれた順や性別による違いはない |
| 孫 | 直系血族としてあり(ただし子が優先される) |
| 兄弟姉妹(親から見た本人のきょうだい) | あり |
| 子の配偶者(嫁・婿) | 原則としてなし |
ここで押さえたいのは、「長男だから」「同居しているから」という理由で義務が重くなる決まりはないという点です。慣習として期待されることはあっても、法律上の根拠ではありません。
新人では「嫁だから当然」という言い方は、法的には根拠がないのですね。
先輩そうなの。子の配偶者は姻族にあたるから、原則として扶養義務はないわ。ただ、特別の事情があるときに家庭裁判所が三親等内の親族に義務を負わせることはできる。あくまで例外的な扱いよ。
義務の中身は「自分で世話をすること」ではない
誤解が多いのはこの点です。扶養の義務は、自分の生活を壊してまで果たすものではないと考えられています。
- 自分や自分の家族の生活を維持したうえで、余力の範囲で行うもの
- 金銭的な援助で果たすこともできる
- 仕事を辞めて付きっきりで介護する義務までは負わない
- 介護保険サービスを使い、費用を分担するのも果たし方の一つ
つまり、「介護=自分の手で身の回りの世話をすること」ではありません。この前提を家族で共有するだけで、話し合いは進みやすくなります。
実際にはどう分担するか
義務が平等でも、住んでいる場所や仕事の状況は違います。現実的には、次の4つに分けて割り振ります。
| 役割 | 内容 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 日常の介護・見守り | 食事、通院の付き添い、様子の確認 | 近くに住んでいる人 |
| お金の負担 | サービス費、おむつ代、生活費の補助 | 遠方に住んでいる人、収入に余裕のある人 |
| 手続き・調整 | 役所の申請、ケアマネとの連絡、施設探し | 平日に動ける人、書類が得意な人 |
| 休みをつくる | 月に数日、交代して泊まる・預かる | 遠方でも、まとまった時間を取れる人 |
遠方に住む人が「何もできない」と考える必要はありません。お金と手続きは距離に関係なく担える役割です。
話し合いの進め方
- 事実を共有する親の状態、必要な支援、かかる費用を数字で示します。感情ではなく情報から始めます。
- できることを各自が出す「やれない理由」ではなく「できること」を挙げてもらいます。
- 役割を紙に書く誰が何をするかを一覧にします。口約束は必ず忘れられます。
- お金の流れを決める誰がいくら出し、誰が管理し、どう記録するかを決めます。
- 定期的に見直す状態は変わります。半年に一度は集まって調整します。
新人集まっても、結局その場の雰囲気で終わってしまいそうです。
先輩だから第三者を入れるの。ケアマネや地域包括支援センターの職員に同席してもらうと、話が具体的になるわ。専門職から「この状態ならこれだけの支援が要ります」と説明されると、みんなが同じ土俵に立てるのよ。
「嫁」が介護を担っている場合
法律上の義務がないにもかかわらず、実際には子の配偶者が中心になっている家庭は多くあります。この場合、次の2点を押さえておきましょう。
1. 特別寄与料を請求できる場合がある
相続人ではない親族が、無償で療養や看護を行い、財産の維持や増加に特別の貢献をしたときは、相続人に対して金銭を請求できる仕組みがあります。2019年の民法改正で設けられたものです。
請求には期限があり、証拠も必要になります。介護した日数、内容、支出した費用を記録に残しておくことが、そのまま備えになります。
2. 抱え込まないことを先に決める
「やってあげている」という意識と、「やってもらって当然」という周囲の受け止めがずれると、関係が壊れます。担っている内容を家族全員が見える形にし、感謝ではなく分担で返してもらう形をつくりましょう。
記録を残しておく
介護の記録は、後の話し合いでも相続の場面でも役に立ちます。難しく考えず、カレンダーに書く程度で十分です。
- 通院に付き添った日と、かかった時間
- 泊まり込んだ日数
- 立て替えた費用(領収書も保管する)
- ケアマネや医師とのやりとりの内容
- その日の親の様子
どうしても決まらないとき
話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所の調停という方法があります。扶養の分担について、第三者を交えて決める手続きです。ただし、ここに至ると関係の修復は難しくなります。その前に、地域包括支援センターやケアマネに相談し、専門職を交えた話し合いを試してください。
親本人の希望も確認する
分担を考えるとき、子どもたちの都合だけで話が進んでしまうことがあります。誰に世話をしてほしいか、どこで暮らしたいかは、本人に希望があるものです。判断する力があるうちに、次の点を聞いておきましょう。
- どこで暮らしたいか(自宅か、施設か)
- 誰に、どこまで頼みたいか
- お金をどう使ってよいか。年金や預貯金の管理を誰に任せるか
- 医療について、どこまでの治療を望むか
本人の意向が分かっていれば、兄弟の間で意見が割れたときの判断の軸になります。「親はこう言っていた」は、最も強い根拠です。可能であれば、聞いた内容をメモに残し、家族で共有しておきましょう。
参考:扶養義務や特別寄与料の具体的な判断は、事情によって異なります。金額や手続きについては、弁護士や司法書士などの専門家に相談してください。
よくある質問(FAQ)
長男が介護をしなければいけないのですか?
嫁に介護の義務はありますか?
遠方に住んでいて手伝えない場合はどうすればよいですか?
介護した分を相続で多くもらえますか?
兄弟が費用を出してくれません。
- 扶養の義務があるのは直系血族と兄弟姉妹。長男・長女といった区別はない
- 子の配偶者(嫁)には原則として扶養義務がない
- 義務は自分の生活を犠牲にする範囲までは及ばず、金銭の負担でも果たせる
- 分担は「日常の介護」「お金」「手続き」「休みをつくる」の4つに分けて割り振る
- 介護した内容と費用は記録に残す。後の話し合いと相続の備えになる
















