サルコペニアの診断基準|AWGS2019の握力・歩行速度の目安

「サルコペニアの診断基準を知りたい」「握力や歩行速度はどのくらいだと低下と判断されるの?」。高齢者の転倒や要介護の原因として注目されるサルコペニアは、リハビリ職やケアマネにとっても押さえておきたいテーマです。
結論からいうと、日本ではアジアのワーキンググループが作った「AWGS2019」がサルコペニアの診断基準として広く使われています。筋肉量の低下に加え、握力などの筋力か、歩く速さなどの身体機能の低下があるとサルコペニアと判断されます。この記事では、AWGS2019の診断基準と数値の目安、地域でできるスクリーニング、診断後の対応をまとめました。
- サルコペニアとはどんな状態か
- AWGS2019の診断基準と握力・歩行速度などの数値の目安
- 医療機関に行かなくてもできるスクリーニングの方法
- サルコペニアと判断されたあとの対応
サルコペニアとは?
サルコペニアは、ギリシャ語の「サルコ(筋肉)」と「ペニア(減少)」を組み合わせた言葉です。年をとることや病気によって、全身の筋肉の量が減り、筋力や身体の機能が低下した状態を指します。
筋肉は30歳代をピークに少しずつ減り始め、高齢になると減るスピードが速くなるといわれています。サルコペニアになると、次のようなリスクが高まります。
- 転倒・骨折
- 歩く、立ち上がるなどの動作の低下による要介護
- 飲み込む力の低下(嚥下障害)
- 入院中の合併症や、退院後の回復の遅れ
サルコペニアは、年齢によるもの(一次性)と、病気・低栄養・活動量の低下などによるもの(二次性)に分けられます。高齢者では、両方が重なっていることが多いのが特徴です。
新人フレイルとはどう違うんですか?
先輩サルコペニアは筋肉に注目した状態、フレイルは心理面や社会面も含めたもっと広い状態よ。サルコペニアはフレイルの大きな原因の一つと考えるとわかりやすいわ。
サルコペニアの診断基準(AWGS2019)
AWGS2019は、アジア人の体格に合わせて作られた基準です。次の3つの要素を組み合わせて判断します。
| 要素 | 測定方法 | 低下の基準 |
|---|---|---|
| 筋力 | 握力 | 男性28kg未満、女性18kg未満 |
| 身体機能 | 6m歩行速度 | 秒速1.0m未満 |
| 5回椅子立ち上がりテスト | 12秒以上 | |
| SPPB(簡易身体能力バッテリー) | 9点以下 | |
| 筋肉量 | DXA法 | 男性7.0kg/m²未満、女性5.4kg/m²未満 |
| BIA法(体組成計) | 男性7.0kg/m²未満、女性5.7kg/m²未満 |
判定は次のように行います。
- サルコペニア:筋肉量の低下+(筋力の低下 または 身体機能の低下)
- 重度サルコペニア:筋肉量の低下+筋力の低下+身体機能の低下(3つすべて)
筋肉量の値は、身長の2乗で割った「骨格筋指数(SMI)」で表します。体格の違いを考慮するためです。DXA法は骨密度の検査にも使われるX線の装置、BIA法は体に弱い電流を流して測る体組成計で、測る方法によって基準値が少し違う点に注意しましょう。
地域でできるスクリーニング
筋肉量を正確に測るには専用の機器が必要です。そこでAWGS2019では、機器がない地域や診療所でも使えるよう、筋肉量を測らずに「サルコペニアの可能性あり」を見つける流れも示しています。
- ふるい分けをする次のどれかに当てはまる人を対象にします。ふくらはぎの周囲長が男性34cm未満・女性33cm未満、SARC-F(5項目の質問票)が4点以上、SARC-CalF(SARC-Fにふくらはぎ周囲長を加えたもの)が11点以上。
- 筋力か身体機能を測る握力、または5回椅子立ち上がりテストを行います。
- 「可能性あり」を判断するどちらかが基準を下回れば「サルコペニアの可能性あり」とし、生活習慣の改善を始めます。
- 必要に応じて医療機関へ確定診断のため、筋肉量を測れる医療機関を紹介します。
SARC-Fの5項目
| 項目 | 質問の内容 |
|---|---|
| 握力 | 4.5kgの荷物を持ち上げて運ぶのがどのくらい難しいか |
| 歩行 | 部屋の中を歩くのがどのくらい難しいか |
| 椅子から立ち上がる | 椅子やベッドから移るのがどのくらい難しいか |
| 階段を上る | 10段の階段を上るのがどのくらい難しいか |
| 転倒 | この1年で何回転んだか |
各項目を0〜2点で答え、合計10点満点で評価します。質問だけで行えるため、ケアマネのアセスメントや介護予防の場でも取り入れやすいのが利点です。
新人ふくらはぎの周りを測るだけでも目安になるんですね。
先輩そうよ。メジャーがあればすぐできるし、指輪っかテストでも代わりになるわ。数字で記録しておくと、変化を追いやすいの。
サルコペニアと判断されたあとの対応
サルコペニアへの対応の基本は、運動と栄養の組み合わせです。
| 対策 | 内容の例 |
|---|---|
| レジスタンス運動(筋トレ) | 椅子からの立ち上がり、かかと上げ、スクワットなど。週2〜3回を目安に、少しきついと感じる強さで行う |
| たんぱく質の摂取 | 肉・魚・卵・大豆製品・乳製品を毎食とり入れる。腎臓の病気がある人は医師に相談 |
| ビタミンDの摂取 | 魚やきのこ類、適度な日光浴 |
| 原因疾患の治療 | 低栄養や慢性の病気など、二次性の原因があれば医療で対応する |
| 活動量を増やす | 座りっぱなしの時間を減らし、家事や散歩で体を動かす |
介護保険を使っている人なら、通所リハビリや訪問リハビリでの筋力トレーニング、管理栄養士による栄養指導などを組み合わせる方法があります。運動だけ、栄養だけよりも、両方を組み合わせたほうが効果が期待できるとされています。
ケアマネがアセスメントで見たいポイント
- 体重の変化、食事量、たんぱく質をとれているか
- 握力の低下を示す動作(ふたが開けにくい、荷物が持てない)
- 立ち上がり・歩行の様子、転倒歴
- 入院や病気で寝ている時間が長くなかったか
退院直後は、入院中の安静で筋肉量が急に減っていることがあります。退院後の早い時期にリハビリを組み込むことが、サルコペニアの進行を防ぐうえで大切です。
よくある質問
サルコペニアはどこで診断してもらえますか?
家庭用の体組成計で筋肉量を測ってもいいですか?
やせていない人もサルコペニアになりますか?
握力はどうやって測ればいいですか?
サルコペニアは改善しますか?
- サルコペニアは、筋肉量が減り、筋力や身体機能が低下した状態
- AWGS2019では、握力は男性28kg未満・女性18kg未満、歩行速度は秒速1.0m未満が目安
- 筋肉量の低下+筋力か身体機能の低下でサルコペニア、3つすべてで重度
- ふくらはぎ周囲長やSARC-Fで、地域でもスクリーニングできる
- 対応の基本は筋トレとたんぱく質の摂取を組み合わせること














