せん妄とは?高齢者の急な混乱の原因と認知症との違い・家族の対応

「入院した親が、夜になると急に『家に帰る』と騒ぎ出した」「昨日まで普通に話せていたのに、今日はつじつまの合わないことを言う」。急に様子が変わると、家族は「認知症になってしまったのでは」と不安になります。
このように数時間〜数日のうちに急に起こる意識の混乱を「せん妄」といいます。せん妄は、入院や手術、脱水、感染症、薬などがきっかけで起こり、原因に対処すると落ち着くことが多い状態です。この記事では、せん妄の症状と認知症との違い、起こりやすい原因、家族ができる対応と予防をまとめました。
- せん妄とはどんな状態か、よくある症状
- せん妄と認知症の違い
- 高齢者にせん妄が起こりやすい原因
- 家族ができる対応と、入院中・自宅での予防
せん妄とは?高齢者によくある症状
せん妄は、体の病気や環境の変化などによって、脳の働きが一時的に乱れ、意識がはっきりしなくなる状態です。高齢者や認知症のある人、手術を受けた人に起こりやすいといわれています。
| 症状 | よくある様子 |
|---|---|
| 注意力の低下 | 話に集中できない、質問に答えられない、話があちこちに飛ぶ |
| 見当識の混乱 | 今いる場所や時間がわからない(病院を自宅と思う、夜を朝と思う) |
| 幻覚・錯覚 | 壁に虫がいる、知らない人が部屋にいると言う |
| 興奮・落ち着きのなさ | 点滴を抜こうとする、ベッドから降りようとする、大声を出す |
| ぼんやりする | 反応が鈍く、ずっとうとうとしている |
| 睡眠のリズムの乱れ | 昼間は眠り、夜になると目がさえて混乱する |
静かなせん妄もある
せん妄には、興奮して落ち着かなくなるタイプのほかに、ぼんやりして反応が乏しくなる「低活動型」もあります。おとなしいため「疲れているだけ」と見過ごされやすいのですが、体の病気が隠れていることもあるため注意が必要です。
新人夜だけ混乱して、朝になると落ち着いているのはなぜですか?
先輩せん妄は一日の中で症状の強さが変わるのが特徴なの。特に夕方から夜にかけて悪くなりやすいわ。朝は普通に話せても、それで治まったとは限らないから、夜の様子も医療者に伝えてね。
せん妄と認知症の違い
| せん妄 | 認知症 | |
|---|---|---|
| 始まり方 | 数時間〜数日で急に始まる | 月単位・年単位でゆっくり進む |
| 1日の中の変化 | 大きい(夜に悪くなりやすい) | 比較的少ない |
| 意識・注意 | はっきりしない、集中できない | 初期は意識ははっきりしている |
| 経過 | 原因に対処すると、数日〜数週間で落ち着くことが多い | 多くはゆっくり進行する |
認知症のある人は、せん妄を起こしやすいことがわかっています。「認知症が急に進んだ」と思ったら、せん妄の可能性も考えて、早めに医師に相談しましょう。せん妄が長引くと、体力や生活の力が落ちることがあります。
高齢者にせん妄が起こりやすい原因
せん妄は、もともとの「起こりやすさ」に、何かの「きっかけ」が重なって起こります。
| 起こりやすくする要因 | きっかけになるもの |
|---|---|
| 高齢、認知症、脳卒中のあと、目や耳が不自由、お酒をよく飲む | 入院、手術、脱水、発熱・感染症(肺炎・尿路感染症など)、便秘、痛み、薬(睡眠薬・痛み止めなど)、環境の変化、睡眠不足 |
自宅で急にせん妄が起きた場合は、脱水や感染症、薬の変更などが原因になっていることがあります。最近始めた薬や、水分・食事の量、熱の有無を確認し、医師に伝えましょう。
自宅で確認したいこと
- ここ数日で新しく始めた薬、量が変わった薬はないか
- 水分や食事の量が減っていないか、尿の量や色はどうか
- 熱、咳、痰、排尿時の痛みなど、感染症のサインはないか
- 何日も便が出ていない、どこかを痛がっていないか
- 夜に眠れていたか、昼夜が逆転していないか
これらをメモにして受診すると、医師が原因を探す手がかりになります。いつから、どんな時間帯に、どのような様子だったかを書いておくと、さらに伝わりやすくなります。スマホで様子を短い動画に撮っておくのも、診察のときに役立つことがあります。ただし、本人の気持ちに配慮して撮りましょう。お薬手帳も必ず持っていきましょう。
家族ができるせん妄への対応と予防
接するときの工夫
- 否定せず、落ち着いた声で話す:「虫なんていない」と強く否定すると、不安や興奮が強くなることがあります。「怖かったね」と気持ちを受け止めます。
- 今の日付と場所をさりげなく伝える:「今日は○日だよ」「ここは病院で、手術が終わったところだよ」と、短くわかりやすく伝えます。
- 話は一度に一つずつ:たくさんの情報を一度に伝えると、混乱しやすくなります。
入院中・自宅でできる予防
- 昼と夜のリズムをつくる昼間はカーテンを開けて明るくし、できるだけ体を起こして過ごします。夜は照明を落として眠りやすくします。
- 時計やカレンダーを見える場所に置く日付や時間がわかると、安心につながります。
- めがねや補聴器を使う見えにくい・聞こえにくい状態は、混乱の原因になります。入院するときは忘れずに持っていきます。
- なじみの物を持っていく家族の写真、使い慣れた湯のみやひざ掛けなどがあると、落ち着きやすくなります。
- 水分・食事・排便を整える脱水や便秘もせん妄のきっかけになります。
- 面会で声をかける家族の顔や声は安心につながります。病院のルールの範囲で面会しましょう。
新人手術の前から、家族ができることはありますか?
先輩あるわよ。ふだんの様子(物忘れの程度、睡眠、お酒の量、飲んでいる薬)を病棟の看護師に伝えておくと、せん妄に気づきやすくなるし、予防の工夫もしてもらいやすくなるの。
よくある質問
せん妄はどのくらいで落ち着きますか?
せん妄のときに薬を使うことはありますか?
入院中に夜だけ付き添いを頼まれました。
せん妄をくり返さないためには?
退院したら元に戻りますか?
- せん妄は、数時間〜数日で急に起こる一時的な意識の混乱
- 夜に悪くなりやすく、ぼんやりする「低活動型」もある
- 認知症はゆっくり進み、せん妄は急に始まって原因に対処すると落ち着くことが多い
- 入院・手術・脱水・感染症・薬などがきっかけになる
- 昼夜のリズム、時計やカレンダー、めがね・補聴器、なじみの物で予防する
















