障害福祉の苦情解決と事故報告|義務・報告の流れと記録の書き方

「利用者の家族から苦情を受けたけれど、どう記録して、どこまで対応すればいい?」「送迎中に利用者がけがをした。市への事故報告は必要?」「苦情解決の第三者委員って、置かないといけないの?」。障害福祉サービスの事業所では、苦情と事故への対応が運営基準で決められています。
結論からいうと、障害福祉の事業所は、苦情を受け付ける窓口と担当者を決め、受け付けた内容と対応を記録する義務があります。事故が起きたときは、市区町村や家族へすみやかに連絡し、事故の状況と処置を記録し、賠償すべき事故は賠償しなければなりません。この記事では、苦情解決のしくみ、事故報告の流れ、記録のポイントと再発防止の進め方をまとめました。
- 運営基準で決められた苦情対応・事故対応の義務
- 苦情解決責任者・苦情受付担当者・第三者委員の役割
- 事故が起きたときの報告の流れと、報告の対象
- 記録の書き方と、運営指導で見られるポイント
苦情解決・事故報告で決められている義務
| 分野 | 運営基準で求められていること(概要) |
|---|---|
| 苦情解決 | 苦情を受け付ける窓口を設けるなど必要な措置を講じる。苦情の内容などを記録する。市区町村や運営適正化委員会の調査に協力し、指導・助言に従って改善する |
| 事故発生時の対応 | 事故が起きたら、都道府県・市区町村・家族などに連絡し、必要な措置を講じる。事故の状況と処置を記録する。賠償すべき事故はすみやかに賠償する |
| 記録の保存 | 苦情・事故の記録を、完結の日から5年間保存する |
あわせて、社会福祉法では、社会福祉事業の経営者は利用者からの苦情を適切に解決するよう努めなければならないとされています。厚生労働省の指針では、苦情解決の体制として3つの役割を置くことが示されています。
苦情解決のしくみ
| 役割 | 担当する人の例 | 仕事 |
|---|---|---|
| 苦情解決責任者 | 施設長、管理者、理事 | 苦情解決の責任を持ち、解決に向けて話し合う |
| 苦情受付担当者 | サビ管、生活相談員など | 苦情を受け付けて記録し、責任者と第三者委員に報告する |
| 第三者委員 | 評議員、民生委員、弁護士など外部の人 | 公正な立場で助言し、必要に応じて話し合いに立ち会う |
苦情解決の窓口と担当者の名前、外部の相談先(市区町村の窓口、都道府県社会福祉協議会の運営適正化委員会)は、重要事項説明書に書き、事業所内に掲示しておきます。
苦情を受けたときの流れ
- 受け付けて記録する苦情の内容、申し出た人、日時、希望していることを、受付票に記録します。
- 責任者・第三者委員に報告する申し出た人が望まない場合を除き、第三者委員にも報告します。
- 事実を確認し、話し合う関係する職員から話を聞き、申し出た人と解決に向けて話し合います。
- 改善して結果を伝える改善の内容を申し出た人に伝え、記録に残します。個人が特定されない形で、事業報告などで公表することも求められています。
新人小さな不満や要望も、苦情として記録しないといけませんか?
先輩記録しておくのがおすすめよ。「苦情」というより「サービスをよくするための声」として集めておくと、運営指導でも改善に取り組んでいる証拠になるの。小さな声のうちに対応すると、大きなトラブルを防げるわ。
事故が起きたときの報告の流れ
- 利用者の安全確保と応急処置まずは本人の状態を確認し、必要なら救急車を呼んだり受診につなげたりします。
- 管理者と家族への連絡すぐに管理者に報告し、家族に状況を伝えます。相談支援専門員にも連絡します。
- 市区町村への第一報報告の対象になる事故は、市区町村(支給決定をした自治体)に、電話などですみやかに第一報を入れます。
- 事故報告書の提出自治体の様式で、事故の状況、対応、原因、再発防止策を報告します。
- 再発防止策の実施と共有職員会議などで原因を話し合い、対策を決めて全員に周知します。
報告の対象になる事故の例
- 受診や治療が必要になったけが(骨折、やけど、切り傷など)
- 誤嚥・窒息、誤薬(薬の飲ませ間違い・飲ませ忘れ)
- 利用者の行方不明
- 食中毒や感染症の集団発生
- 送迎中の交通事故
- 職員の不祥事(虐待の疑い、金銭の着服など)
報告の対象や期限は自治体ごとに決められています。「受診したら報告」「死亡や入院は直ちに報告」など、自分の事業所を管轄する市区町村のルールを確認しておきましょう。なお、虐待の疑いがある場合は、障害者虐待防止法にもとづく通報が別に必要です。
記録の書き方と再発防止
- 事実と意見を分ける:「〜と思われる」ではなく、見たこと・聞いたことをそのまま書きます。
- 5W1Hで書く:いつ、どこで、誰が、何をしていて、どうなったか、どう対応したかを具体的に書きます。
- ヒヤリハットも集める:事故にならなかった「ひやっとした場面」を集めて分析すると、大きな事故を防げます。
- 個人を責めない:原因を職員個人の不注意だけにせず、手順や環境、人員配置の問題として考えます。
新人事故のことを家族に伝えるのは、気が重いです…。
先輩気持ちはわかるわ。でも隠したり、報告が遅れたりすることが一番の信頼の損失になるの。事実を正直に、早く伝えて、再発防止策を一緒に示すことが大切よ。賠償責任保険に入っているかも、日ごろから確認しておいてね。
ヒヤリハットを事故防止に生かす
ヒヤリハットとは、事故にはならなかったものの、「ひやり」「はっと」した場面のことです。1件の重大な事故の背景には、多くの小さな事故やヒヤリハットがあると言われています。
- 書きやすい様式にする:チェック式の項目と短い記述欄にすると、職員が気軽に書けます。
- 書いた人を責めない:報告が多いことを「よく気づいた」と評価すると、報告が集まります。
- 定期的に集計する:場所・時間帯・場面ごとに集計すると、事故が起きやすいポイントがわかります。
- 対策を共有する:決めた対策は、会議や掲示で全員に伝え、効果を振り返ります。
障害福祉で多い事故の例と対策
| 事故 | 対策の例 |
|---|---|
| 転倒・転落 | 床の整理、手すりの設置、移動時の見守りの位置の工夫 |
| 誤嚥・窒息 | 食事の形態の確認、ひと口の量の調整、食事中の見守り |
| 誤薬 | 名前と日付の読み上げ、二人での確認、服薬の記録 |
| 行方不明 | 出入口の確認、外出時の人数確認、写真と特徴をまとめた情報シート |
よくある質問
苦情の第三者委員は必ず置かなければいけませんか?
事故報告をすると、行政処分になりますか?
記録は何年保存すればいいですか?
- 苦情の窓口を設けて記録し、行政などの調査に協力することが運営基準の義務
- 苦情解決責任者・苦情受付担当者・第三者委員の3つの役割を置く
- 事故は家族・市区町村へすみやかに連絡し、状況と処置を記録する
- 報告の対象や期限は自治体ごとに違うので、管轄のルールを確認する
- 事実を正確に記録し、ヒヤリハットも含めて再発防止につなげる
















