車椅子は借りるか買うか|介護保険の扱いと判断の3軸

「車椅子は、借りるのと買うの、どちらがいいのか」——ケアマネや福祉用具の相談員がよく受ける質問です。金額だけを比べて決めると、あとで体に合わなくなり買い直すことになりかねません。
この記事では、介護保険での扱いの違いと、借りるか買うかを分ける判断の軸を整理しました。
- 介護保険では車椅子がどう扱われるか
- 借りるか買うかを分ける3つの判断の軸
- レンタルと購入それぞれの費用の目安
- 買うほうが向いているケース
- 障害者手帳がある場合の購入費の助成
車椅子は借りるか買うか|まず制度の扱いを確認する
判断の前提として、介護保険での扱いを押さえます。車椅子は「福祉用具貸与」の対象であり、レンタルで使うのが原則です。
| 方法 | 介護保険の扱い | 自己負担 |
|---|---|---|
| レンタル(福祉用具貸与) | 対象 | 月額レンタル料の1〜3割 |
| 購入 | 対象外 | 全額(介護保険は使えない) |
介護保険で購入費の払い戻しを受けられるのは、入浴や排泄に使う特定福祉用具に限られます。車椅子を買っても、介護保険からお金は戻りません。ここを誤解したまま購入し、あとで相談に来る家族は少なくありません。
なお、レンタルの対象になるのは原則として要介護2以上です。要介護1や要支援の人は、状態によって例外給付の手続きが必要になります。対象の整理は介護保険でレンタルできない福祉用具を確認してください。
新人買ったほうが長い目で見て安い、という話も聞きます。
先輩単純な金額だけならそう見えることもあるわ。でも、体の状態は変わるものでしょう。座り方が変われば必要な車椅子も変わる。合わないものを使い続けると、床ずれや姿勢の崩れにつながるの。そこまで含めて考えたいわね。
判断の3つの軸
1. どのくらいの期間使うか
使う期間が読めない、または状態が変わりそうならレンタルが向いています。退院直後、リハビリ中、進行性の病気がある場合などです。逆に、長期にわたり同じ状態が続く見通しなら、購入も選択肢になります。
2. 体に合わせた調整が必要か
既製品では座位が保てない、体格が標準と大きく違う、長時間座る——こうした場合は、体に合わせて作る車椅子が必要になります。オーダーメイドに近いものは、レンタルでは対応しきれないことがあります。
3. 誰が手入れをするか
レンタルなら、点検・修理・交換は事業者が行います。購入した場合は自分で管理し、タイヤの空気やブレーキの調整も自己責任です。手入れの手間まで含めて費用と考える視点が必要です。
費用の目安
| 方法 | 費用の目安 | 含まれるもの |
|---|---|---|
| レンタル(標準的な自走用) | 1割負担で月500〜800円程度 | 本体、点検、修理、交換、引き取り |
| レンタル(介助用・機能つき) | 1割負担で月700〜1,500円程度 | 同上 |
| 購入(既製の標準品) | 3万〜10万円程度 | 本体のみ。手入れは自分で行う |
| 購入(体に合わせて作るもの) | 20万〜40万円以上 | 採寸・調整を含む |
金額は品目・事業者・地域によって幅があります。正確な額は、担当のケアマネや福祉用具専門相談員に確認してください。
買うほうが向いているケース
- 介護保険の対象にならない:要介護認定を受けていない、例外給付が認められない
- 体に合わせて作る必要がある:姿勢の保持に特別な調整がいる
- 使い方が特殊:スポーツや通勤など、日常の移動以外で使う
- 長期にわたり状態が変わらない:若い年齢からの利用が見込まれる
- 短時間・低頻度の外出だけ:年に数回の通院のみで、簡易なものを常備したい
障害者手帳がある場合
身体障害者手帳を持っている人は、障害者総合支援法の補装具費支給制度で購入費の助成を受けられる場合があります。体に合わせて作る車椅子が必要なときは、こちらが選択肢になります。
- 市区町村の障害福祉窓口に相談する制度の対象になるかを確認します。
- 医師の意見書をもらう必要性を判断するための書類を用意します。
- 判定を受ける更生相談所などで、必要な仕様が判定されます。
- 業者と調整して作る採寸や試乗を経て製作します。
ただし、介護保険が使える人は介護保険が優先されるのが原則です。どちらを使うかは窓口に確認してください。
新人65歳以上で手帳もある場合は、どちらになりますか。
先輩原則は介護保険が先よ。ただ、貸与の標準的な車椅子では体に合わない場合は、補装具として認められることがあるの。個別の判断になるから、必ず窓口と相談してね。
選ぶときに確認したいこと
| 確認点 | 見るところ |
|---|---|
| 自走か介助か | 本人が車輪を回すか、家族が押すか |
| 座面の幅と奥行き | お尻の幅+2〜3cmが目安。広すぎると姿勢が崩れる |
| 足台・肘台 | 乗り降りのときに外せるか、跳ね上がるか |
| 重さ | 車に積むなら、持ち上げられる重さか |
| 折りたたみ | 玄関や車のトランクに入るか |
| ブレーキ | 介助者が手元で操作できるか |
家の環境もあわせて確認する
車椅子が届いてから「玄関を通らない」「廊下で曲がれない」と分かることがあります。幅・段差・回転できる広さを先に測っておきましょう。段差にはスロープ、上がりかまちには手すりというように、住宅改修や別の用具と組み合わせる必要が出ることもあります。
レンタルを始めるまでの流れ
- ケアマネに相談するどんな場面で使いたいか、どこまで自分で動かせるかを伝えます。担当がいない場合は、地域包括支援センターが窓口になります。
- 福祉用具専門相談員と選ぶ体格と住まいの状況を見たうえで、候補を提案してもらいます。試用ができる事業者もあります。
- ケアプランに位置づけるなぜ必要なのかを計画に記載します。ここが抜けると給付の対象になりません。
- 搬入と説明を受けるブレーキのかけ方、足台の外し方、たたみ方を、使う家族全員が教わります。
- 定期的に見直す相談員が訪問して状態を確認します。合わなくなっていれば交換を相談します。
この流れは、申し込んだ当日に届くものではありません。必要になる時期が読めているなら、早めに相談しておくと、退院日や外出の予定に間に合わせやすくなります。
参考:レンタル料金や貸与の対象範囲は、制度改正や事業者によって変わります。実際の負担額と手続きは、担当のケアマネジャーと福祉用具専門相談員に確認してください。
よくある質問(FAQ)
車椅子は介護保険で買えますか?
要介護1でもレンタルできますか?
レンタル品が体に合わないときは交換できますか?
介護保険を使わず自費でレンタルできますか?
中古品を買うのはどうですか?
- 車椅子は介護保険では貸与の対象で、購入費は給付されない
- 判断の軸は「使う期間」「体に合わせた調整の必要性」「手入れを誰がするか」
- 状態が変わる見込みがあるなら、まずレンタルで試す
- 体に合わせて作る必要があるときは、購入や補装具費支給を検討する
- 身体障害者手帳がある場合でも、介護保険が使えるならそちらが優先される
















