MCI(軽度認知障害)とは?症状のチェックと受診の目安・予防法

「最近物忘れが増えたけれど、生活には困っていない」「認知症の手前の段階があると聞いた」。そんな状態を指す言葉が「MCI(軽度認知障害)」です。
結論からいうと、MCIとは、物忘れなどの認知機能の低下はあるものの、日常生活はおおむね自立している、健常と認知症の間の段階です。MCIの人がすべて認知症になるわけではなく、生活習慣の見直しなどで健常な状態に戻る人もいます。この記事では、MCIの症状とチェックのポイント、認知症との違い、受診の目安、進行を防ぐためにできることをまとめました。
- MCI(軽度認知障害)の意味と、認知症との違い
- MCIでよく見られる症状とセルフチェックのポイント
- 受診の目安と検査の内容
- 認知症への進行を防ぐためにできること
MCI(軽度認知障害)とは?
MCIは「Mild Cognitive Impairment」の略で、日本語では軽度認知障害と呼ばれます。次のような状態を指します。
- 本人や家族が、記憶などの認知機能の低下を感じている
- 検査をすると、年齢の平均より認知機能が低下している
- 買い物や家事、お金の管理など、日常生活はおおむね自分でできている
- 認知症とは診断されない
つまり、「年相応の物忘れ」より進んでいるけれど、「認知症」とまではいえない段階です。
MCIから認知症に進む割合
MCIの人のうち、1年で認知症に進むのは5〜15%程度とされる一方、健常な状態に戻る人も一定の割合でいると報告されています(調査によって数字に幅があります)。MCIは「認知症になることが決まった状態」ではなく、対策によって結果が変わりうる大切な時期です。
新人MCIの段階で気づければ、できることが多いんですね。
先輩そうよ。しかも最近は、アルツハイマー病によるMCIや軽度の認知症の人を対象に、病気の原因物質にはたらきかける新しい薬も使われ始めているわ。早めの受診の意味が、以前より大きくなっているの。
MCIと認知症・年相応の物忘れとの違い
| 項目 | 年相応の物忘れ | MCI | 認知症 |
|---|---|---|---|
| 忘れ方 | 体験の一部を忘れる(昨日の夕食のおかずを思い出せない) | 体験の一部を忘れることが目立って増える | 体験そのものを忘れる(夕食を食べたこと自体を忘れる) |
| 自覚 | 忘れたことを自覚している | 自覚していることが多い | 自覚が乏しくなる |
| 日常生活 | 支障なし | おおむね自立(複雑なことに時間がかかる) | 支障がある |
| 進み方 | ほとんど進まない | 進む人も戻る人もいる | 少しずつ進むことが多い |
MCIでよく見られる症状とチェックのポイント
MCIでは、次のような変化が見られることがあります。
- 同じことを何度も聞く、話す
- 約束や予定を忘れることが増えた
- 物を置いた場所を忘れて探すことが多い
- 料理の段取りや、旅行の計画など、複雑なことに時間がかかるようになった
- 人の名前や言葉がすぐに出てこない
- 趣味や外出への興味が薄れた、意欲が落ちた
- お金の計算や、薬の管理でミスが増えた
本人より先に、家族や周りの人が「前と違う」と気づくことが多いです。「いつごろから、どんな変化があったか」をメモしておくと、受診のときに役立ちます。
新人ケアマネとしては、どんなところに気をつけて見ればいいですか?
先輩モニタリングの訪問で、薬の飲み残しが増えていないか、カレンダーの予定が書かれなくなっていないか、冷蔵庫に同じ物がたまっていないかを見るといいわ。生活の中の小さな変化が、気づきのきっかけになるのよ。
MCIの受診の目安と検査の内容
物忘れの変化が半年以上続いている、家族が以前と違うと感じる、といった場合は受診を検討しましょう。相談先には、次のような場所があります。
- かかりつけ医(必要に応じて専門医を紹介してもらえる)
- もの忘れ外来、認知症外来(脳神経内科・精神科・老年内科など)
- 認知症疾患医療センター
- 地域包括支援センター(受診先の相談や、認知症初期集中支援チームへのつなぎ)
受診すると、問診のほか、次のような検査が行われます。
| 検査 | 内容 |
|---|---|
| 認知機能検査 | 長谷川式認知症スケール(HDS-R)、MMSE、MoCA-Jなど。MCIの発見にはMoCA-Jが使われることも多い |
| 画像検査 | CT・MRIで脳の萎縮や脳梗塞の有無を確認。必要に応じて脳の血流を調べる検査も |
| 血液検査 | 甲状腺の病気やビタミン不足など、治療できる原因がないかを確認 |
MCIから認知症への進行を防ぐためにできること
認知症を完全に防ぐ方法はまだ確立していませんが、生活習慣の見直しで、リスクを下げられる可能性が示されています。
| 取り組み | 具体例 |
|---|---|
| 運動 | ウォーキングなどの有酸素運動を週に数回。計算しながら歩くなど、頭と体を同時に使う運動もおすすめ |
| 生活習慣病の管理 | 高血圧・糖尿病・脂質異常症の治療を続ける。禁煙する |
| 食事 | 野菜・魚・大豆製品などをバランスよくとる。塩分やとりすぎに注意 |
| 社会参加 | 趣味の集まり、ボランティア、通いの場などで人と交流する |
| 知的な活動 | 読書、日記、囲碁・将棋、楽器など、楽しみながら頭を使う |
| 聞こえの対策 | 難聴があれば補聴器の使用を検討する。聞こえにくさは認知症のリスクの一つとされる |
| 睡眠 | 規則正しい生活で、十分な睡眠をとる |
大切なのは、「やらなければ」と義務にしすぎず、本人が楽しく続けられることを選ぶことです。
家族ができる関わり方
- 失敗を責めない:物忘れを指摘し続けると、本人は自信をなくし、外出や会話を避けるようになりがち
- メモやカレンダーを活用する:予定を見える場所に書く、薬はお薬カレンダーで管理するなど、忘れても困らない仕組みをつくる
- 役割を続けてもらう:料理や買い物など、これまでの役割はできる範囲で続けてもらう
- 一緒に出かける:散歩や趣味の集まりに誘い、運動と交流の機会を増やす
本人がいちばん不安を感じていることも多い時期です。「一緒に考えよう」という姿勢で接することが、安心につながります。
今のうちに準備しておきたいこと
MCIの段階は、本人が自分の希望を伝えられる大切な時期です。お金の管理、将来の住まい、医療やケアへの希望などを、家族と話し合っておきましょう。人生会議(ACP)や任意後見制度の検討も、判断力が保たれている今だからこそできる準備です。
よくある質問
MCIと診断されたら介護保険は使えますか?
MCIの段階で薬は使いますか?
本人が受診を嫌がるときはどうすればいいですか?
- MCIは、認知機能の低下はあるが日常生活はおおむね自立している、健常と認知症の間の段階
- 認知症に進む人もいれば、健常な状態に戻る人もいる
- 物忘れの変化が続くときは、もの忘れ外来やかかりつけ医に早めに相談する
- 運動・生活習慣病の管理・社会参加・聞こえの対策などでリスクを下げられる可能性がある
- 判断力が保たれている今のうちに、お金や将来の希望を家族と話し合っておく















